我々は過去に細胞骨格蛋白質Vinculinが造血幹細胞 (HSC)の骨髄内での維持に重要な因子であることを報告した (J Biol Chem 2010)。HSCのVinculinをRNA干渉の手法により抑制し、マイクロアレイ解析を用いて最も発現が抑制される因子としてFoxf1aを同定した。Foxf1aはForkhead Box転写因子の1種で、ノックアウトマウスは中胚葉形成不全で胎生致死となる。Foxf1aの役割を明らかとするためにコンディショナルノックアウトマウス(Foxf1aflox/flox)を作製した。骨髄細胞では造血幹細胞と巨核球にFoxf1aの発現を認めた。昨年度にはPF4-Creとの交配による血小板機能を検討した、本年度は、さらにHSC機能への役割を明らかとするために、Mx-Creマウスとの交配を行い、Mx-Cre:Foxf1aflox/floxを作製し、その機能を解析した。polyI:C投与によりHSCのFoxf1a発現の減少を認めた。Mx-Cre:Foxf1aflox/floxはFoxf1aflox/floxと比較して、HSCの割合は変わらないものの、骨髄細胞数が増加した。末梢血の血球数に差は認めなかった。骨髄でのc-kit陽性、ScaI陽性、Lineage陰性、CD48陰性、CD150陽性細胞をHSCと定義し、HSC 100個(Ly5.2)をLy5.1陽性骨髄細胞(2x105)と競合的骨髄移植を行った。HSC移植後の生着はMx-Cre:Foxf1aflox/floxで有意に低下した。Long-term culture-initiating cell(LTC-IC)の割合も低下した。BrdU取り込みによる細胞周期解析ではHSCのS期の割合が増加した。以上より、Foxf1aはHSCの静止期を保ち、その生着能に寄与している可能性がある。
|