研究課題
前年度に引き続いて脱メチル化剤によりCXorf48の免疫原性を増強できるかどうかを検討した。健常人末梢血リンパ球よりHLA-A*24:02拘束性CXorf48ペプチドを用いて誘導したCTLが、脱メチル化剤で処理した造血器腫瘍細胞を認識するかどうか検討したが、有意な認識の増強は認められなかった。脱メチル化剤により本抗原の発現が増強することはすでに確認しているため、それ以外にCTLに対する負の影響があるものと考えられた。その機序の一つとして、白血病細胞株PL21を脱メチル化剤で処理したところ、免疫抑制分子であるPD-L1の発現が増加することを見出した。さらに、実際に白血病患者末梢血中に本抗原に反応するCTLが存在するかどうかを検討した。2年以上のCMR維持後にイマチニブ投与を中止した16例のCML患者において、末梢血単核球をCXorf48特異的デキストラマーを用いて染色し解析したところ、3例でCXorf48特異的CTLが検出された。これらの症例では全患者がCMRを維持していた。一方で、CXorf48特異的CTLを検出できなかった13症例中4例で遺伝学的な再発を認め、再発率は31.3%であった。以上より、CMRを維持している患者では、TKI治療後に残存しているCML幹細胞に対してCXorf48特異的な免疫反応が生じ、CMRの維持に関与している可能性が示唆された。これらの結果から、CXorf48抗原は白血病幹細胞に発現し、CTLの標的となるため、治療標的として有用であると考えられる。また、in vivoモデルの構築のために抗原特異的CTLのクローン化を試みた。健常人リンパ球より誘導した抗原特異的CTLからデキストラマー陽性細胞をソーティングし、限界希釈法により12クローンを得たが、再度行ったデキストラマー染色で陽性細胞が得られなかったため、クローンの樹立は今後の課題と言える。
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