研究課題
日本骨髄バンク (JMDP)を介して非血縁者間骨髄移植 (UR-BMT) が行われた患者とドナー6967ペアの不偏的なHLAアリルの関連解析で、患者とドナーのHLA-B*51:01と患者のHLA-C*14:02は有意に重症急性GVHDのリスクが高いことと関連した。更に詳細に解析を行い、患者のHLA-C*14:02が不適合となっていることとが重症急性GVHDの最も高いリスク因子となっていることが明らかとなった。日本人のUR-BMTでは患者HLA-C*14:02とドナーHLA-C*15:02の不適合の組み合わせはNK細胞受容体リガンドのGVH方向不適合となっていることが多く、重症急性GVHDのリスクが非常に高い。日本人間のUR-BMTで一定の割合で生じるこの特異的な組み合わせが、JMDPからの既報告で示されているNK細胞受容体リガンドのGVH不適合が重症GVHDのリスクとなっている主要な原因であるということが、本報告で初めて明らかとなった。また、患者の不適合HLA-C*14:02は最も強い重症GVHDの因子となり、UR-BMTにおいて許容されない不適合としてドナー選択の重要な情報となると考えられた。この研究成果については、学会発表及び論文発表を行った。日本人の主要なハプロタイプのブロック構造については、JMDPを介して移植が行われ、ゲノムワイド関連解析を施行した1500ペアのSNPデータを用いて解析した。特にHLA-DPB1遺伝子領域を中心とした解析で、領域が大きく二つのグループに分かれることが判明し、患者とドナーのHLA-DPB1グループの組み合わせが、急性GVHDのリスクと相関することも明らかとなった。JMDPの移植例でHLA-A, -B, -C, -DRB1が一致した患者とドナー 1500ペアのサンプルを用いて、TAP1, TAP2, LMP1 LMP2などの遺伝子のSNPタイピングをTaqMan法で施行した結果と、前述のHLA-DPB1遺伝子領域のSNPデータ及び臨床データを統合し、急性GVHDのリスクとなる要因について検索を行っている。
2: おおむね順調に進展している
大規模な非血縁者間骨髄移植例のHLAタイピングデータ及び臨床データを用いた解析で、移植後の重症GVHDや死亡のリスクとなるアリルを同定した。さらに患者とドナーのHLAアリルの不適合を考慮した解析を詳細に行うことで、これらのHLAアリルがリスクとなる要因について解明し、論文発表を行うことができた。これまでの欧米からの報告と異なり、日本人の非血縁者間骨髄移植でNK細胞受容体のリガンドの不適合が重症急性GVHDの原因となることの原因がわかっていなかったが、本研究で特定の患者とドナーのHLA-Cの不適合の組み合わせが要因であることを示すことができた意義も大きいと考える。また、multi-SNPデータを用いた解析で日本人の主なHLAハプロタイプ構造を捉え、特にHLA-DPB1領域が大きく二つのグループに分かれること、さらにそれが急性GVHDのリスクと関連があることを示す結果が得られている。これも新たな知見であり、今後HLA領域内の非HLA遺伝子多型についてタイピングを行ったデータ及び臨床データを統合してさらに解析を進める必要がある。
重症急性GVHDのリスクとなるHLAアリルの結果、multi-SNP解析による日本人のHLAハプロタイプの構造及び新たにタイピングを行った非HLA遺伝子多型の結果を統合して、非血縁者間骨髄移植において許容できる、または許容できない患者とドナーの組み合わせのアルゴリズムを作成する。特に、HLA-DPB1領域で得られている新たな解析結果について、さらに詳細な解析を進め、必要に応じてSNPタイピングやシークエンスを行う。
HLA領域内の免疫関連遺伝子多型と臨床データとの関連解析を進めている。現在までにタイピングを行った結果と臨床データの関連性を検討し、新たにタイピングの必要な多型を解析するためのプローブや試薬を購入する予定であったが、一部解析が遅れ、購入を年度内にできなかった。また、研究成果についてHaematologicaにオープンアクセス化された論文発表を行った。年度内にアクセプトされて掲載が決定したが、掲載料の請求が2016年4月となったため、次年度に論文掲載料として使用する予定である。
年度中に掲載が決定された論文の掲載料の支払いに使用する。また、SNPタイピングやシークエンスに必要な試薬の購入及び、次年度に得られる研究成果についての学会発表のための旅費及び論文発表のための費用とする。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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