研究課題
顕微鏡的多発血管炎(MPA) は小血管の壊死性血管炎で,肺胞出血,糸球体腎炎などを合併する自己免疫疾患で病態は不明な点が多い.自己抗体の Anti-neutrophilic cytoplasmic antibody (ANCA) が産生されることが特徴的である.最近,好中球はNADPH oxidase (NOX) 活性依存的に好中球細胞外トラップ (NETs) というクロマチンやMPOなどから構成される細胞外構造物の形成の異常がANCA 産生を介してMPAを発症させることが示唆されている.しかし,このNETs形成の異常がどのような制御機構の破綻によるかは未解明である.NOXの活性制御にはイノシトールリン脂質 (PIs) が関与するため,PIs代謝酵素でPI(3)P などのホスファターゼであるmyotubularinファミリー(MTMRs) 分子群に着目した.従来,ヒトのMPAを再現した血管炎動物モデルの報告は非常に少ない.そのため我々は野生型マウスにヒト型MPAを誘発できる独自の方法を開発した.この方法は病理組織学的所見がヒト型MPAを再現し,ANCA上昇も認められた.この方法を用いて,いくつかの好中球特異的MTMRs遺伝子欠損マウスおよびPIsキナーゼ遺伝子欠損マウスにMPAを誘発し,組織学的検討,ANCA価測定を行った.さらにNOX活性,NETs形成,PIsの変化を含む細胞生物学的解析を行った.いくつかのMTMRs欠損の遺伝型では,野生型よりもNETs形成促進,ANCA上昇,組織学的重症度が上昇した.一方,このMTMRsの逆反応を触媒するPIsキナーゼの欠損はこれらを軽減した.さらにPIsキナーゼ特異的抑制薬はヒト好中球のNETs形成を抑制した.これらの結果からPI(3)P生成の抑制がNETs形成を抑制することを見出した.
すべて 2017
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JCI Insight
巻: 2 ページ: -
doi: 10.1172/jci.insight.89462.