全身性強皮症は、皮膚および内蔵臓器の線維化、血管異常、免疫異常(自己抗体出現)を特徴とする発症機序不明の全身性疾患である。皮膚の線維化に伴って脂肪組織が減少することが知られており、近年、脂肪組織から産生されるサイトカイン(アディポカイン)が皮膚の線維化の制御に関係することが注目されている。アペリンは、脂肪細胞から産生されるアディポカインの一つであり、主に血管内皮細胞や脂肪細胞から産生され、受容体であるAPJと結合し、下流にシグナルを伝えて血管新生、心臓機能、脂肪細胞機能などを制御する分子として知られている。アペリンと線維化については、アペリン/APJシグナルは心臓の線維化を抑制するという報告がある一方で、肝細胞では、アペリンが線維化を亢進させるという報告もあり、一定の傾向が得られておらず未だ不明な点が多い。そこで、今回、我々は、正常および強皮症患者由来のヒト皮膚線維芽細胞を用いて、線維化におけるアペリンの役割を解明することを目的として研究を開始した。その結果、アペリンがヒト皮膚線維芽細胞の線維化を抑制的に制御することを明らかにし、その機序について解明しつつある。また、ブレオマイシン誘発強皮症モデルマウスに対するアペリン投与の影響についても検討し、治療的効果を有することを見出した。また、強皮症の皮膚硬化部位では脂肪細胞が減少しているため、アペリン産生が低下していることも線維化に寄与している可能性がある。本研究の成果によって、強皮症の皮膚線維化、血管障害に対する臨床応用が期待できる。
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