研究課題
自己免疫疾患発症におけるSox5の役割を解析するために、T細胞特異的Sox5欠損マウスを作成し、実験的自己免疫性脳脊髄炎の発症を検討した。その結果、野生型マウスに比べSox5欠損マウスでは脳脊髄炎が軽症化し、脳脊髄に浸潤しているCD4陽性T細胞の産生するIL-17は有意に減少することが明らかとなった。また、Sox5欠損マウス由来のCD4陽性T細胞をin vitroでTh17細胞へと分化させたところ、野生型由来のCD4陽性T細胞に比べてIL-17産生やRORγtの発現が低下したことから、Sox5はTh17細胞分化を誘導することにより自己免疫疾患発症に関与していることが示唆された。次に、Sox5をCD4陽性T細胞に過剰発現させTh17細胞分化を検討したところ、Sox5単独の過剰発現ではIL-17の産生は認められなかったが、Sox5とc-Mafを過剰発現させることでIL-17を多量に産生する細胞が誘導されることが明らかとなった。さらに、Stat3欠損CD4陽性T細胞ではSox5tとc-MafによるTh17細胞分化を認めたが、RORγ欠損CD4陽性T細胞では誘導できなかったことより、c-MafとSox5はSTAT3の下流、かつRORγtの上流でTh17細胞の分化を誘導していることが示唆された。一方、RNAシーケンスとChIPシーケンスを組み合わせた解析では、Sox5とc-MafはRORγt以外のTh17関連遺伝子の幾つかに結合するが、転写を亢進させる遺伝子はRORγt以外にはなかったことから、c-MafとSox5はRORγtを協調的かつ特異的に発現させることによりTh17細胞分化を誘導していることが示唆された。以上の結果、Stat3の下流分子であるSox5とc-Mafは協調的に働くことでRORγtプロモーターを活性化させ、Th17細胞分化を誘導していることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、研究計画1. 自己免疫疾患発症におけるSox5の役割の解析をおこない、実験的自己免疫性脳脊髄炎の発症における、Sox5の役割を明らかにし、さらにSox5によるTh17細胞分化誘導機構の網羅的解析を行い、Sox5とc-MafがRORγtを協調的かつ特異的に発現させることによりTh17細胞分化を誘導していることを明らかにした。平成26年度の計画をほぼ達成できており、概ね順調に進展していると評価できる。
今後、研究計画2. 自己免疫疾患におけるSoxCファミリー分子の役割の解明を遂行する。SoxCファミリー分子はHMGドメインとC末端に転写活性化部位を持ち、Sox4, Sox11, Sox12が属する。Sox4はTGF-βにより誘導され、Th2細胞のmaster regulatorであるGATA-3の機能を抑制することが報告されているが、自己免疫疾患におけるSoxC分子の役割に関する報告は無い。一方本研究者は、本申請研究の予備実験において、1) Treg細胞にはSox12とSox4が発現していること、2) T細胞にSox12を強制発現させるとIL-21の産生が抑制され、Foxp3の発現が誘導されることを見出している(未発表データ)。そこで今後、自己免疫疾患の発症、制御性T細胞の分化、およびIL-21の産生制御におけるSoxC分子の役割を明らかにする。
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