研究課題
SoxCファミリー分子はHMGドメインとC末端に転写活性化部位を持ち、Sox4, Sox11, Sox12が属する。Sox4はTGF-βにより誘導され、Th2細胞のmaster regulatorであるGATA-3の機能を抑制することが報告されているが、自己免疫疾患におけるSoxC分子の役割に関する報告は無い。本研究者は、予備実験において1) 制御性T細胞(Treg)細胞にはSox12とSox4が発現していること、2) T細胞にSox12を強制発現させるとIL-21の産生が抑制され、Foxp3の発現が誘導されることを見出した。そこでTreg細胞が発症抑制に重要な役割を果たしている実験的炎症性腸疾患モデルを用いて、その炎症性腸疾患発症におけるSox12の役割について検討した。まずCD25陽性細胞を除去した野生型マウス脾臓CD4陽性T細胞(CD25陰性CD4陽性T細胞)をRag-2欠損マウスに移入し腸炎を誘導する実験系に、レトロウィルスでSox12を発現させたCD4陽性T細胞を移入し、その腸炎抑制作用を検討した。その結果、Sox12発現レトロウィルスを感染させたCD4陽性T細胞は、コントロールレトロウィルスを感染させたCD4陽性T細胞に比較して有意に腸炎の発症を抑制することが明らかとなった。さらにSox12欠損マウスおよび野生型マウスよりCD25陰性CD4陽性T細胞を精製しRag-2欠損マウスに移入したところ、Sox12欠損CD25陰性CD4陽性T細胞は野生型CD25陰性CD4陽性T細胞と比較して有意に腸炎を増悪させることが明らかとなった。これらの結果、Sox12がFoxp3の発現を誘導しTreg細胞分化に関与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
現在本研究申請時の研究計画1を終了し、研究計画2を行っているところであり、概ね当初の計画通り順調に進行していると考えられる。
本研究者はTGF-βがIL-21の産生を強く抑制することを既に報告しているが(J Exp Med 2008)、その分子メカニズムは依然不明である。予備実験において本研究者は、1) TGF-βによりSox12の発現が誘導されること、2)誘導性IL-21産生T細胞にSox12を発現させるとIL-21の産生が強く抑制されることを見出している。そこで今後の研究では、IL-21産生制御におけるSox12の役割も解析していく。また並行して、Treg細胞の分化におけるSox12の役割についての分子メカニズムについて明らかにしていく予定である。
平成28年1月、Rag欠損マウスの出産数が通常よりも少ない上、食殺による産仔喪失が重なり再度交配が必要となった。その結果、 研究計画2の実験的炎症性腸疾患の実験が6ヶ月遅延することとなった。
Rag欠損マウスの交配数を増加し、今後予定通り実験を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 備考 (1件)
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