研究課題
いくつかの膠原病疾患のおいてはI型インターフェロン(IFN)の過剰産生が病態形成に寄与すると考えられており,I型IFNの産生を制御することは膠原病疾患の新しい治療戦略となる可能性がある.本研究では,①E3ユビキチンリガーゼ活性を持つTRIMファミリーの各膠原病疾患における発現プロファイル,②各膠原病疾患におけるTRIMファミリー発現量とI型IFN産生の関連性,③各膠原病疾患におけるIRFファミリーのユビキチン化の状態とTRIMファミリーの関連性,④ユビキチン修飾系に作用する既知低分子化合物によるI型IFN産生制御の可能性の4点を調べることにより,膠原病疾患でのI型IFNの産生におけるユビキチン修飾系の役割,および新たな治療戦略としてのユビキチン修飾系関連薬の可能性について検討している.当該年度は主に上記①および②を目的として研究サンプルの収集とそれを用いた基礎的解析を行った.まずSLE,SS,SSc,PM/DMの患者,および健常者の各5例ずつ末梢血から密度勾配遠心法によってPBMCを分離し,逆転写酵素を用いてcDNAを作製した.次に,得られたcDNAを用いてTRIM蛋白群のmRNA発現量を網羅的に調べた.その結果,いくつかの疾患において健常者との間にTRIM21の発現量の差がみられた.現在得られたcDNAを用いて,他のTRIMファミリーの発現やI型IFN群の産生量についても各疾患群と健常者で比較検討中である.
2: おおむね順調に進展している
各疾患における患者および健常者から検体は順調に得られており,cDNAおよびウェスタンブロットのサンプルとして蓄積が進んできている.また,基礎的な解析はすでにある程度進んできており,実験系も確立されつつある.
次年度以降は,各疾患の症例数を蓄積し,上記で得られたTRIM21の発現量の健常者との差を確認するとともに,各膠原病疾患におけるTRIMファミリーの発現量とI型IFN群の発現の関連を解析し,さらにIRFファミリーの発現量およびユビキチン化の程度を調べる予定である.
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