研究課題
いくつかの膠原病疾患においてはI型インターフェロン(IFN)の過剰産生が病態形成に寄与すると考えられてことから,I型IFNの産生制御が膠原病疾患の新しい治療戦略となる可能性がある.本研究ではE3ユビキチンリガーゼ活性を持つTRIMファミリーの各膠原病疾患における発現プロファイルや各膠原病疾患におけるTRIMファミリー発現量とI型IFN産生の関連性などを調べることにより,膠原病疾患でのI型IFNの産生におけるユビキチン修飾系の役割,および新たな治療戦略としてのユビキチン修飾系関連薬の可能性について検討した.まず,全身性エリテマトーデス(SLE),シェーグレン症候群(SS),多発性筋炎・皮膚筋炎(PM/DM),強皮症(SSc)の各患者および健常者から末梢血単核球(PBMC)を採取してqPCRを行い,各疾患におけるTRIMファミリーの発現量を比較した.その結果,健常者群と比較してSLE群及びSS群ではTRIM21 mRNAの発現が有意に亢進していたが,逆にPM/DM群やSSc群ではTRIM21 mRNAの発現量が有意に低下していた.このことから,同じI型IFNの産生が亢進する疾患群のなかでも疾患によってTRIMファミリーの発現のプロファイルが異なることが明らかになった.一方,SLEではTRIM21とは反対にTRIM27 mRNAの発現が有意に低下していた.TRIM27はE3ユビキチンリガーゼ活性を有し,I型IFN遺伝子を誘導する転写因子IRF3を活性化するTBK1蛋白をユビキチン化することが分かっている.ウェスタンブロット法の結果,SLEではTBK1蛋白の発現が亢進していることが明らかになった.以上から,SLEにおけるI型IFNの過剰産生にはTRIM27の発現低下も関与していることが示唆された.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件)
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