研究課題/領域番号 |
26461469
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
岳野 光洋 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50236494)
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研究分担者 |
桐野 洋平 横浜市立大学, 大学病院, 講師 (50468154)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ベーチェット病 / M2マクロファージ / IL-10 / CCR1 / HO-1 / CD163 |
研究実績の概要 |
ベーチェット病(B病)は眼皮膚粘膜病変を主体とした炎症性疾患である。先に私たちはB病患者白血球では抗炎症蛋白であるheme oxygenase-1(HO-1)の発現が低下し、その発現調節に関わるIL-10が疾患感受性遺伝子であることを報告した。本研究ではこれらの異常がM2(抗炎症性)マクロファージの機能不全に起因するという仮説を立てた。昨年度、末梢血単核細胞をGM-CSFおよびM-CSF存在下でM1およびM2分化誘導系を確立した。CD163、HO-1、フェリチンH鎖などのM2分化マーカーのmRNAおよび蛋白はM-CSF存在下でのみ、その発現が観察された。また、機能的にもLPS刺激時にTNF-a、IL-6はM1/M2ともにほぼ同等の産生が見られたが、IL-10の産生はM2のみであった。さらに、B病のIL10のリスクアレルの有無によるM2分化細胞のIL-10産生能を解析した結果、リスクアレルなし>ヘテロ>リスクアレルホモであり、既報と同様にリスクアレルがIL-10産生不全に寄与することが確認された。同じくB病の疾患感受性遺伝子の一つであるCCR1はM2マクロファージに選択的に発現することも明らかになった。以上よりB病病態の一部はM2マクロファージ機能不全により一元的に説明しうる可能性が高い。 本年度は上記の健常者での成績を確認するとともに、B病患者(24例)を対象に健常者と比較検討した。その結果、GM-CSFおよびM-CSFによるM1およびM2分化誘導系には健常者と差異はなく、B病患者の末梢血単核細胞でも分化の可塑性が保たれていると考えられた。ただし、B病治療は病型、重症度により多様なので、その影響については、今後継続的に検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
再現性の高い、in vitro のM1/M2分化誘導系を確立した。B病の疾患感受性遺伝子として同定されているIL-10、CCR1はいずれもM2マクロファージで発現が高く、B病病態の一部はM2マクロファージ機能不全により一元的に説明しうる。 今年度、横浜市大から日本医科大学への異動に伴い、施設内倫理委員会申請、実験室のセットアップなどため、研究全体の進行が当初の予定より一部遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
現時点ではBD患者単球にin vitroの分化誘導能に関する異常は見出されておらず、仮に生体内でM2マクロファージ機能不全があったとしても、分化の可塑性は保たれ、薬理学的に是正される可能性は高い。 今後、患者生体内でのM1/M2分化状況と分化環境を解析するために、血清中HO-1、各種サイトカイン、sCD163などの解析を行う予定である。また、病変部に浸潤したマクロファージの解析なども今後の検討課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、施設の異動により、本研究プロジェクトを横浜市立大学単独施設の研究から同大学と日本医科大学との共同研究に変更した。そのため倫理委員会申請、研究室体制の再構築などの必要があり、研究計画全体が遅延した。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究プロジェックトの倫理委員審査承認後、すでに、患者血清の採取、保存は開始している。来年度は本格的に本研究を再開する。
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