研究課題
ベーチェット病(B病)は眼皮膚粘膜病変を主体とした炎症性疾患である。私たちは先にB病患者白血球において抗炎症蛋白であるheme oxygenase-1(HO-1)の発現が低下していることを報告し、その後の遺伝子解析でその発現調節に関わるIL-10が疾患感受性遺伝子であることを見出した。いずれも抗炎症性M2マクロファージの機能に関与することから、本研究ではその機能低下がB病炎症に寄与するという仮説を立てた。まず、ヒト末梢血単球をGM-CSFおよびM-CSF存在下で培養することで、 in vitroにおけるM1およびM2分化誘導系を確立した。M2分化マーカーのCD163、HO-1、フェリチンH鎖などのmRNAおよび蛋白はM-CSF存在下で培養したときのみ、その発現が観察された。こうして樹立した健常者由来M1/M2マクロファージはLPS刺激に反応し、ほぼ同等のTNF-a、IL-6を産生するが、IL-10はM2のみで産生された。また、B病の疾患感受性遺伝子の一つであるCCR1は健常者由来M2マクロファージに選択的に発現し、リガンドであるMIP-1aにもM1より高い感受性を示した。一方、B病患者の末梢血からもほぼ同様にM1/M2マクロファージが分化誘導されたが、M1におけるCCR1発現は健常者由来M1より亢進していた。したがって、炎症局所からのMIP-1aなどのケモカインに対して、健常者では主にM2マクロファージが集積し、炎症制御機転が働くのに対し、B病患者では一部にM1マクロファージの遊走も加わり、量的にも質的にもM1>M2となるため逆に炎症が増幅すると考えられた。さらに、樹立したM1マクロファージをM-CSFで刺激するとIL-10産生能を獲得することから分化したマクロファージの機能的可塑性が確認され、マクロファージ形質転換がB病治療戦略の一つとなる可能性が示唆された。
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