研究課題
私たちが見出した強皮症動物モデルの転写因子AP-1を構成するFra-1を高発現するトランスジェニック(TG) マウスは皮膚硬化、肺間質の線維化、肺動脈のリモデリングを自然発症する。本マウスにおける線維化のメカニズムを追究するため、年齢および性をマッチさせたFra-1 TGマウスおよび野生型マウスの皮膚、肺組織を経時的に免疫組織化学、免疫蛍光多重染色により評価した。その結果、TGマウスでは肺間質の線維化や肺動脈の内膜・中膜の増殖と肥厚、線維化に先行して単核球の組織への浸潤を認めた。これら浸潤細胞の大半はCD11b+/CD68+のマクロファージであった。最近、CD4+T細胞と同様に単球・マクロファージも大きくM1とM2に分類され、M1は主に細胞障害、M2は免疫制御や組織修復、線維化への関与が示されている。そこで、組織に浸潤するマクロファージのサブセットを調べるため、特異的マーカーを用いた免疫組織化学によりM2/M1比を検討した。その結果、TGマウスで野生型に比べてM2/M1比が有意に高値を呈していた(4.7 ± 0.9 versus 0.2 ± 0.1, P < 0.05)。したがって、Fra-1 TGマウスでは皮膚や肺組織にM2に偏倚したマクロファージがリクルートされ、その結果として組織のリモデリング、線維化が誘導されることが明らかとなった。
3: やや遅れている
Fra-1 TGマウスの繁殖が難しく、実験に必要な数を確保することが困難であったが、得られたマウスを用いて病態の中心となるM2マクロファージを同定することができた。しかし、それ以上の詳細な追究は十分に進捗したと言い難い。また、平成26年度中途に研究代表者の所属施設が異動となったために、実験室や動物飼育施設の立ちあげに時間を要した。
ようやく実験室が稼働し、マウスの繁殖できる体制が整ったことから、来年度は当初の予定通りM2マクロファージの組織リモデリング、線維化を促進するメカニズム、M2マクロファージが病変局所のルクルートされる機序を追究する。Fra-1 TGマウス繁殖の困難さから、マウスを用いた実験がはかどらない可能性があるため、同時に強皮症患者検体を用いたM2マクロファージやFra-1を含めたAP-1構成蛋白の役割について検討を進める予定である。
平成26年度中途に研究代表者の所属施設が異動となったために、実験室や動物飼育施設の立ちあげに時間を要した。そのため、消耗品として使用予定の研究費の一部を平成27年度に繰り越した。
元来、平成26年度に実施予定であった実験に消耗品として用いる。
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