研究課題/領域番号 |
26461471
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
桑名 正隆 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50245479)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 強皮症 / 単球 / マクロファージ / 肺高血圧症 / 肺線維症 / 動物モデル |
研究実績の概要 |
私たちが見出した転写因子AP-1を構成するFra-1を高発現するトランスジェニック(TG) マウスは皮膚硬化、肺間質の線維化、肺動脈のリモデリングを自然発症することから、ヒト強皮症にみられる線維化、血管病態を再現した動物モデルである。平成26年度には、本マウスにおける強皮症病態が1年の経過で緩徐に進行し、間質性肺疾患と肺高血圧症で死に至ることを明らかにした。今年度は本マウスにおける線維化のメカニズムを追究した。Fra-1 TGマウスおよび野生型マウスの皮膚、肺組織を経時的に免疫組織化学、免疫蛍光多重染色により評価した結果、TGマウスでは肺間質の線維化や肺動脈の内膜・中膜の増殖と肥厚、線維化に先行してCD11b+/CD68+のマクロファージの浸潤がみられた。そこで、組織に浸潤するマクロファージのM1/M2サブセットを調べた。その結果、TGマウスで野生型に比べてM2/M1比が有意に高値を呈していた。さらに、Fra-1発現とM2変異の関連を追究するため、テトラサイクリン存在下でFra-1を発現するコンディショナルTGマウスを作成し、骨髄から単球を分離した。マクロファージへの培養系にテトラサイクリンを添加するとM2関連遺伝子が誘導されることが確認された。したがって、Fra-1 TGマウスでは単球におけるFra-1の高発現によりM2マクロファージへの分化が促進され、それらが皮膚や肺組織にリクルートされて組織の線維化が誘導される機序が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Fra-1 TGマウスの繁殖が難しく実験の進捗が遅れていたが、コンディショナルTGマウスを新たに樹立したことで問題点を克服することができた。
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今後の研究の推進方策 |
動物モデルを用いた解析はほぼ終了したことから、来年度は強皮症患者検体を用いたM2マクロファージやFra-1を含めたAP-1構成蛋白の役割について検討を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Fra-1 TGマウスの繁殖が難しいため、前年度までに使用したマウス数が当初予定より減ったため、飼育費が少なく余剰金が生じた。マウスを用いた実験で達成できなかった基礎的研究内容について、来年度にヒト患者検体の使用により実施する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗費として使用予定
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