皮膚硬化、肺間質の線維化、肺動脈のリモデリングを自然発症するFra-1を高発現するトランスジェニック(TG) マウスはヒト強皮症にみられる線維化、血管病態を再現した動物モデルである。本マウスでは肺間質の線維化や肺動脈の内膜・中膜の増殖と肥厚、線維化に先行してCD11b+/CD68+のマクロファージの浸潤がみられた。組織に浸潤するマクロファージはM2サブセットがほとんどで、テトラサイクリン存在下でFra-1を発現するコンディショナルTGマウス由来の単球では、マクロファージ分化誘導時にFra-1を高発現させるとM2関連遺伝子が誘導されることが確認された。そこで今年度は、強皮症患者由来の末梢血CD14+単球を用いて転写因子AP-1構成成分のc-fos、Fra-1、Fra-2などの発現レベルを検討した。その結果、健常人に比べて強皮症患者でFra-1のmRNA発現が上昇し、高発現は蛋白レベルでも確認された。臨床的にはびまん皮膚硬化型の発症早期に顕著にFra-1発現が高く、特に急速に進行する病初期に単球におけるFra-1発現の重要性が確認された。また、Fra-1発現とM2関連遺伝子12/15lox、fizz1、arg1発現には相関がみられた。以上より、強皮症患者ではFra-1 TGマウスと同様に単球におけるFra-1高発現によりM2マクロファージへの分化が促進され、それらが皮膚や肺組織にリクルートされ組織の線維化が誘導される機序が明らかとなった。
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