研究課題/領域番号 |
26461472
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
野沢 和久 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30398680)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | CTGF / Angiogenesis / HUVEC / Notch-1 / Rheumatoid arthritis |
研究実績の概要 |
CTGFはmultiple functionalなサイトカインであり様々な機能を持つ事が知られている。我々は今までの研究結果よりヒト滑膜組織及び血清中にCTGFが過剰発現し、関節リウマチ(RA)の病態形成に深く関与している事をつきとめている。興味深い事にCTGFは血管内皮細胞における血管新生作用を持つ事が報告されている。滑膜組織の血管新生はRA発症の重要な因子のひとつであるが、直接的に血管新生阻害を治療目標とする既存の治療法は存在せず、この点においても従来の治療法とは別の新しい機序で作用する新規治療の標的分子として重要であると考えられる。そこで、我々は本研究の最初としてヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)と関節リウマチ患者滑膜組織を用いて血管新生におけるCTGFの作用を調べた。その結果、CTGFはHUVECに対して増殖反応、化学走化性、抗アポトーシス作用において促進的に働く事を確認した。また、関節リウマチ患者にはIL-6やIL-17Aなどの炎症性サイトカインが関節炎の発症に重要な役割を担っている事が明らかになっているが、これらのサイトカインがHUVECからのCTGF産生を誘導している事も突き止めた。さらに、我々はこのHUVECにおけるCTGFの作用に関しては、CTGF刺激による受容体からのERK1/2のリン酸化を介した細胞内活性化シグナルがNotch-1の活性化を誘導する事が重要である事も発見した。また、関節リウマチ患者の滑膜組織を用いた検討では、疾患コントロールの変形性関節症患者由来の滑膜組織に比べてNotch-1の発現が亢進している事も突き止めた。Notch-1は関節リウマチ発症の血管新生において重要な分子であるという事が最近報告されており、CTGFはHUVECに対して直接的またはNotch-1を介した間接的作用により血管新生を促進する事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定されていた研究計画では、実験開始から1年以内に抗CTGF抗体を関節リウマチモデルマウス(CIAマウスとSKGマウス)に投与して、抗体投与によるCTGF阻害効果が関節炎の発症・進展に抑制効果が認められという事を明らかにする予定であったが、現段階ではまだそれを達成しておらず、予定した実験計画より遅れている。その理由として、本研究はCTGFがRA発症において重要な血管新生に関わる分子であり、これを治療標的とした新規治療の可能性を調べる事が主要な目的である事があげられる。CTGFが血管内皮細胞に作用して血管新生を促進するという報告は存在するが、これが関節リウマチの病因として実際に関わっているという報告は存在していない。そこで、我々はHUVECと滑膜組織を用いたin vitro/ex vivoの研究で、CTGFの血管新生増強作用が関節リウマチ発症に重要であるという事を先に明らかにした方が良いと判断して、最初に前述の研究に着手した。幸運な事に、本年度の研究においてそれを実証する結果を得る事が出来たが、時間的・人員的にin vivoの関節リウマチモデルマウスへの抗CTGF抗体の投与実験をする余裕がなく、その事が本研究計画を予定より少し遅らさせている最大の原因と考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
はじめに着手したCTGFの血管新生増強作用が関節リウマチ発症に重要であるという事を明らかにするために施行した研究は、想定された結果を得る事が出来たのでこれで完了する予定である。それにより、時間的・人員的な余裕が出来るので、主要な実験計画である関節リウマチモデルマウスへの抗CTGF抗体の投与実験を行い、関節炎抑制効果および血管新生阻害効果が認められるかについて今後調べていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究は細胞や組織切片を用いたin vitro/ex vivoでの実験が主だったため、マウスを用いたin vivoでの抗体投与実験が十分に施行出来ていないので、(in vivoでの抗体投与実験の方が研究費用がより高額になるので)想定していた研究費用より少なかった理由と考える。
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次年度使用額の使用計画 |
残額に関しては、研究に用いる疾患モデルマウスの購入費用に当てる予定である。
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