CTGFはmultiple functionalなサイトカインであり様々な機能を持つ事が知られている。我々は今までの研究結果よりヒト滑膜組織及び血清中にCTGFが過剰発現し、関節リウマチ(RA)の病態形成に深く関与している事をつきとめている。今年度の行った研究の新規の知見として、抗ヒトCTGF抗体がマウスCTGFと交差反応性がある事を利用したCIAマウスへの抗CTGF抗体(使用した抗体は、現在、間質性肺炎の治験薬としてすでに臨床応用されている。)の投与実験を行い関節炎抑制効果について確認する事が出来た。CTGF阻害による関節炎抑制効果のメカニズムについては、滑膜組織の血管新生はRA発症の重要な因子のひとつであり、過去の報告よりCTGFは血管内皮細胞における血管新生作用を持つ事が報告されているので、それに焦点をあてて研究を進めている。その結果、CTGFはHUVECに対して増殖反応、化学走化性、抗アポトーシス作用において促進的に働く事を確認している。さらに、我々はこのHUVECにおけるCTGFの作用に関しては、CTGF刺激によるシグナルがNotch-1の活性化を誘導する事も突き止めている。さらに、関節リウマチ患者の滑膜組織を用いた検討では、疾患コントロールの変形性関節症患者由来の滑膜組織に比べてNotch-1の発現が亢進している事も突き止めた。 Notch-1は関節リウマチ発症の血管新生において重要な分子であるという事が最近報告されており、CTGFはHUVECに対して直接的またはNotch-1を介した間接的作用により血管新生を促進する事が示唆された。直接的に血管新生阻害を治療目標とする既存の治療法は存在せず、この点においても抗CTGF抗体を用いたRA治療は、従来の治療法とは別の新しい機序で作用する新規治療として重要であると考えられる。
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