研究課題/領域番号 |
26461473
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
千葉 麻子 順天堂大学, 医学部, 准教授 (40532726)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 全身性エリテマトーデス / 自然リンパ球 / MAIT細胞 |
研究実績の概要 |
Mucosal-Associated Invariant T細胞(MAIT細胞)は腸管に多く存在する自然リンパ球として知られていたが、近年ヒトの末梢血T細胞の5%を占めることが明らかとなり免疫応答に重要な生理的役割を担うことが示唆されている。我々は全身性エリテマトーデス(SLE)患者において末梢血中MAIT細胞が著しく減少しており、その一因がMAIT細胞の活性化誘導細胞死である可能性を示してきた。本研究では、SLE患者MAIT細胞の活性化の原因を解明するため、まず患者血清中のサイトカイン濃度をBioplex法およびELISA法を用いて網羅的に解析し、MAIT細胞の数や活性化状態と関連がみられるサイトカインを同定した。患者血清中で増加していたサイトカインについてはMAIT細胞の活性化状態へ及ぼす影響を検証した。さらにSLEにおいては抗原提示細胞によるMAIT細胞の活性化能が亢進していることを明らかにした。 次に、MAIT細胞はループス病態の抑制に作用するのか、それとも悪化に働くのかを明らかにするためループス自然発症系モデルであるFcγRIIB-/-Yaaマウスを用いた研究を開始した。MAIT細胞を欠損するMR1欠損マウスおよびMAIT細胞を過剰発現するVα19iTCRトランスジェニック(Vα19iTg)マウスをそれぞれFcγRIIB-/-Yaaマウスと交配し、ループス病態におけるMAIT細胞の機能解析に必要な準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ループスモデル動物実験については、自然発症系モデルであるFcγRIIB-/-YaaマウスとMAIT細胞欠損マウス(MR1ノックアウトマウス)もしくは過剰発現マウス(Vα19iTCRトランスジェニック)の交配を行い、ループス病態へのMAIT細胞が及ぼす影響について解析を行う準備を行った。 マウスの繁殖効率が低く平成26年度に目的のマウスが十分に得られなかったため、SLE患者検体の解析を開始することとした。まずSLE患者血清におけるサイトカイン濃度をBioplexを用いて網羅的に解析し、健常者コントロール群と患者群、疾患活動性の有無で違いのみられるサイトカインを調べた。SLE患者血清において上昇しているサイトカインについてin vitroでMAIT細胞の活性化や増殖に及ぼす影響を検証し、MAIT細胞の活性化に作用するサイトカインを明らかにした。 次に抗原提示細胞のMAIT細胞活性化能の違いを健常者コントロールとSLE患者で比較を行った。SLE患者および健常者の末梢血単核球より抗原提示細胞を磁気ビーズを用いてソーティングした。健常者末梢血単核球のMAIT細胞をソーターを用いて単離して抗原提示細胞と共培養し、MAIT細胞の活性化マーカーの発現量を比較した。SLE患者の抗原提示細胞は健常者コントロールと比較してMAIT細胞の活性化能が亢進していることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
SLE患者由来の抗原提示細胞の機能亢進のメカニズムを解明するため、単球、樹状細胞、B細胞のサブセットについて頻度や表面マーカーの解析を行う。それぞれの細胞群をソーターを用いて単離し、MAIT細胞活性化能を比較する。また、T細胞受容体やサイトカイン刺激後の細胞内シグナル分子を解析し、SLE患者MAIT細胞のシグナル伝達に異常がないか検証する。 MAIT細胞は腸管粘膜などに多く存在し、腸内細菌など微生物由来の抗原を認識することが知られている。腸内細菌叢の違いによりMAIT細胞の活性化が引き起こされる可能性を検証するため、まずSLE患者の腸内細菌叢のメタゲノム解析を行う。SLEにおいて違いの見られる細菌がMAIT細胞の活性化に関与するか検証する。MAIT細胞を活性化する細菌については抗原の同定を試みる。 ループス動物モデルについては、MAIT細胞欠損または過剰発現マウスと自然発症系モデルであるFcγRIIB-/-Yaaマウスを交配し、MAIT細胞の有無や過剰発現によりループス病態に違いがみられるかを検証する。抗原を用いたMAIT細胞の活性化や機能抑制が病態に影響を及ぼすかを調べる。また、マウスMAIT細胞の検出方法を確立するためMAIT細胞T細胞受容体に対するモノクローナル抗体の作製を行い、ループスマウスモデルにおけるMAIT細胞の動態や活性化状態、産生サイトカインについて解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子改変マウスとループスモデルマウスとの交配を進めたが、妊孕性の問題から年度内に目的のマウスを十分な数得ることができなかった。そのためマウス検体の解析に必要な試薬の購入が延期となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度では目的のマウス検体の解析が可能となるため、ループス病態の解析に必要な試薬類を購入する予定である。
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