研究課題
Mucosal-Associated Invariant T(MAIT)細胞など自然リンパ球は他の免疫担当細胞に作用することで免疫応答の調節に関与すると考えられている。MAIT細胞はヒトの末梢血T細胞の5%を占めることが明らかとなり、ヒトの免疫応答において重要な生理的役割を担うことが推測されている。我々は全身性エリテマトーデス(SLE)患者において末梢血中MAIT細胞が著しく減少しており、その一因が活性化誘導細胞死である可能性を示してきた。本研究では、患者検体およびループスモデルを用い、MAIT細胞の活性化の理由やループス病態への影響を明らかにすることを目的とした。患者および健常者末梢血から抗原提示細胞をソーティングし、MAIT細胞と共培養することにより活性化能を比較した。健常者に比較しSLE患者の単球はMAIT細胞活性化能が亢進していた。SLE患者MAIT細胞の活性化状態は血漿中のIFNα、IL-18などのサイトカインと関連しており、またこれらのサイトカインによりMAIT細胞は活性化することをin vitroの系で明らかにした。以上の結果よりSLE患者では、抗原提示細胞の機能や生体内で上昇しているサイトカインがMAIT細胞の活性化に寄与している可能性が示唆された。次に、ループス病態におけるMAIT細胞の役割を解明するため、ループス自然発症マウスモデルを用いて解析を行った。MR1の欠損によりループス発症マウスの生存率は改善し、抗dsDNA抗体価と糸球体沈着IgG量は低下した。一方で皮膚炎についてはMR1欠損により症状の悪化が見られた。MAIT細胞はループスマウスモデルにおいて、自己抗体産生と腎炎の促進、皮膚炎には抑制的に作用する可能性が示唆された。ヒトのSLE病態においても抗dsDNA抗体価と腎炎の活動性は関連しているが、臓器障害の重症度と皮膚症状とは必ずしも相関しないことが知られている。そのため、それぞれのループス病態についてMAIT細胞の関わりを調べることが重要であると考えられた。
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