研究課題/領域番号 |
26461479
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
中野 和久 産業医科大学, 医学部, 助教 (50406500)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / DNAメチル化 / DNA脱メチル化 / 関節リウマチ / 滑膜細胞 / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
<背景・目的>慢性炎症を来す代表疾患である関節リウマチ(RA)において、線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)は骨軟骨破壊の中心を担う。RA由来FLSは疾患特有なDNAメチル化プロファイルを有し攻撃的表現型と関連するが、DNAメチル化異常の誘導機序は不明であった。今回、近年同定された能動的脱メチル化酵素であるTETの発現と炎症性サイトカインの影響を解析した。 <方法>関節手術で得られた患者由来滑膜、及び、FLS を4~6 継代で使用。TET1-3の発現はqPCR、WB、免疫染色で、水酸化メチルシトシン(5hmC)の発現はDot blotで評価。siRNAによるTETノックダウン後にTNFで96時間刺激を行い、各種メディエーター、表面抗原の発現、細胞移動度を評価した。 <結果>①RAのFLSでは、TNFやIL-1等による持続的な刺激がDNAメチル化酵素(DNMT)の発現低下により受動的脱メチル化をもたらした。②RA滑膜組織ではOAとの比較でTET3発現が強かった。③TNFやIL-1、IL-6等の刺激はFLSのTET3のmRNAおよびタンパク発現レベルを増加させ、5hmCの発現を促進した。④TET3 siRNAにより、TNF依存性のCCL2産生、ICAM-1発現、浸潤能等はほぼ完全に阻害された。 <考察>炎症性サイトカインによる慢性刺激はDNAメチル化酵素 (DNMT)の発現低下により受動的脱メチル化をもたらすことが知られるが、今回の検討によりRAのFLSにおいて同様の刺激が能動的脱メチル化酵素TET3の発現誘導を介してFLSのDNAメチル化異常を強力に誘導し、攻撃的な表現型獲得を付与ことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由1)予備的な検討によりすでに、①RAの滑膜におけるTetタンパク質の特殊性、②炎症性サイトカインによる滑膜細胞における5hmCの発現誘導、③炎症性サイトカインによるTetタンパク質の発現の変化、など興味深い研究結果を得ていたため。 (理由2)患者滑膜検体は当大学病院の整形外科から提供をいただいているが、申請者はすでに相当数のストックを所持しているため。
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今後の研究の推進方策 |
<1>H27年度以降には、炎症性サイトカインによって誘導されるTet3-5hmCの標的遺伝子・遺伝子座の同定のために、ChIP-シークエンスを行う方針とした。 <2>in vivoでのTet3の役割の評価としては、SCID-huRAgマウスを使用してsiRNAでのTET3ノックダウンを行う予定であったが、TET3ノックアウトマウスが入手できたため、これにKBxN血清移入を行って関節炎発症の有無を評価する方針に変更した。
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