研究課題
本研究では、I型アレルギー反応や炎症反応を引き起こすヒスタミンを生体内で唯一合成可能な酵素・ヒスチジン脱炭酸酵素(HDC, L-histidine decarboxylase)遺伝子の転写活性機構について明らかにすることを目標としている。研究代表らのグループは、本研究開始時までにHdcプロモーター領域のメチル化や転写因子の結合能について研究し、遠位のエンハンサーと連携して働く基本的プロモーターの構造について明らかにした。初年度となる平成26度はヒスタミン産生誘導実験と研究試料の調整としてマウスマスト細胞細胞株P815の脱メチル化による転写活性化実験を行った。P815細胞株は脱メチル化剤・5-アザシチジンを用いて処理をするとプロモーター領域に脱メチル化が起こり、Hdc遺伝子の転写が活性化することが報告されており、同様の処理を行いクロマチン免疫沈降(ChIP)解析のための試料を調整した。この調整試料のcDNAについて発現解析を行ったところHdc遺伝子の発現上昇が上記報告と同様に示された。同試料をもとにChIP解析を今後行う予定であるが、ChIPの試料調整時の条件検討、およびCTCFとH3K4me3の結合が予想されるHDCプロモーター領域についてChIP解析用のプライマーを設計した。設計した17箇所注15箇所については想定通りのPCR反応が確認された。また平成27年度は上記の解析を継続的に進めるとともに、次世代シーケンサー技術を用いたChIP-seq法を用いた解析法についても情報収集を行った。今後は、ChiP法とChIP-seq法の利点を比較しながら、研究方向について検討を計っていく。
3: やや遅れている
ヒスタミン産生誘導実験と細胞試料の調整としてマウスマスト細胞細胞株P815の脱メチル化による転写活性化実験を行った。P815細胞株を脱メチル化剤・5-アザシチジンで処理するとプロモーター領域に脱メチル化が起こり、Hdc遺伝子の転写が活性化することが報告されており(Suzuki-Ishizaki, Ohtsu, et al., 2000)、同様の処理を行いクロマチン免疫沈降(ChIP)解析のための試料調整を行った。この調整試料のcDNAについて発現解析を行ったところHdc遺伝子の発現上昇が上記報告と同様に示された。同試料をもとにChIP解析を今後行う予定であるが、ChIPの試料調整時の条件検討、およびCTCFとH3K4me3の結合が予想されるHDCプロモーター領域についてChIP解析用のプライマーを設計した。設計した17箇所注15箇所については想定通りのPCR反応が確認された。こちらの解析を継続的に進めるとともに同様に調整した試料で解析が可能なChIP-seq法についても情報収集を行った。
計画していた腹腔マクロファージへの大腸菌感染実験と骨髄由来培養マスト細胞を用いたアレルギー反応実験を行い、さらに解析を進める。昨年度までに実施したマウスマスト細胞細胞株P815の5-アザシチジン処理実験と合わせてChIP解析によるHdc転写活性化領域の検討を行うことによりアレルギー反応や感染炎症時に特異的なHdc転写制御領域を明らかにする。さらに得られる知見をもとにBACトランスジェニックレポーターマウスを作成し、大腸菌感染によるヒスタミン産生の誘導実験を行い、生体内のGFP強度を観察・測定し、野生型のBACを導入したマウスの結果との比較検討を行う。また、昨年度に情報収集したChIP-seq法についてChiP法との利点を比較しながら、研究方向について適宜修正をしながら活性化領域の決定方法について検討を行う。
平成27年度までにマウスマスト細胞細胞株P815の脱メチル化による転写活性化実験を行い、解析を進める予定であった。実験条件や新規解析技術ChIP-seq法について検討を行った結果、次年度以降にChIP解析あるいはChIP-seq法による解析を行うことにしたため、次年度使用額が生じた。
次年度使用額の研究費については、定量PCR用のプライマーおよび試薬キット類の購入、抗体類やChIP実験のための試薬消耗品類の購入、その他の細胞生物学的、分子生物学的解析研究に必要な試薬・キット類、細胞および細菌培養用培地類、プラスチック・ガラス器具類、一般試薬類、消耗品類の購入に当てる予定である。また、50万円を超える設備、備品類の購入予定はない。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
PLoS One
巻: 11(1) ページ: 1-16
10.1371/journal.pone.0147519