研究課題
間質性肺炎は膠原病に合併する難治性の内蔵病変の一つであり、これまでの当研究室のマウスでの研究成果からヒトのCD161陽性γδT細胞に着目し、ヒト間質性肺炎の病態発生/増悪のメカニズムを解明し、治療に結びつけることを目的としている。まず、CD161陽性γδT細胞の細胞特性に関して調べてみたところ、CD161陰性γδT細胞と比較してインターフェロン(IFN)-γの産生能が有意に高く、IL-17産生能も高い傾向にあった。また、ケモカインではCCL-3、CCL-4の発現が多く認められた。そして、実際の膠原病患者において、多発性筋炎/皮膚筋炎、関節リウマチ、強皮症患者をリストアップし、末梢血中のCD161陽性γδT細胞の発現量の違いに関して、健常人と比較した。その結果、特に強皮症患者において、健常人と比較してCD161陽性γδT細胞が有意に上昇していた。そこで、強皮症患者の中で間質性肺炎の有無での違いに関して検討した結果、予想に反して、間質性肺炎合併強皮症患者群よりも、むしろ間質性肺炎を合併しない患者群において末梢血中CD161陽性γδT細胞数は増加していた。さらに、梢血中CD161陽性γδT細胞数と、間質性肺炎のマーカーであるKL-6との間には、負の相関関係があった。その理由を説明するために、各患者末梢血中のCD161陽性γδT細胞を採取し、cell lineを樹立し、CD161陽性γδT細胞の性質を調べた。その結果、強皮症患者のCD161陽性γδT細胞cell lineでは、有意にIFN-γが低下し、さらに間質性肺炎合併群ではCCL-3発現が有意に上昇していた。詳細な検討の結果、抗線維化作用を持つIFN-γが低下している上、IFN-γ作用を抑制するCCL-3が上昇していることが、線維化を増進させた可能性がある(この考察も、今回の研究から)と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
本研究の大きなテーマの一つであった「ヒトCD161陽性γδT細胞による間質性肺炎発症/病態維持のメカニズムの解析」に関して、間質性肺炎を合併する代表的な幾つかの疾患(多発性筋炎/皮膚筋炎、関節リウマチ、強皮症)において、末梢血での検討ながらCD161陽性γδT細胞と病態の関係を明らかにすることが出来た。その結果、中でも、強皮症患者において末梢血中のCD161陽性γδT細胞と間質性肺炎には病態形成において重要な働きを示唆する結果も得られ、サイトカインのIFN-γとケモカインのCCL-3の発現の差によって、線維化形成の差を生じている可能性も指摘でき、研究予定は概ね順調に進展していると考えている。
ヒト膠原病疾患におけるCD161陽性γδT細胞による間質性肺炎発症/病態維持のメカニズムの解析をテーマに研究を進め、幾つかの膠原病患者における末梢血中のCD161陽性γδT細胞の性質や数の変化に関して、初年度である程度情報を得ることが出来た。さらに間質性肺炎の病態に迫るに当たっては、末梢血中での細胞の研究で良いのかという問題が有る。そこで、当初から、次のテーマとして「ヒトCD161陽性γδT細胞の臓器集積と臓器内での機能の解析」をあげている。間質性肺炎であれば、本来ならば肺生検組織からの情報や、少なくとも気管支肺胞洗浄液(BALF)での情報が必要と考える。ただ、これまでの研究結果で最も着目して研究すべき強皮症は希少疾患であり、間質性肺炎は重大な合併症であることから、検体を得る機会はかなり限られる。当然、研究より治療が優先されるべきであり、生検やBALFの検体を用いた研究を進めることは難しい可能性が高い。ただ、研究期間内に、検体を得る機会があれば積極的に研究を進めたいと考えている。また、もう一つのテーマである「ヒトCD161陽性γδT細胞の膠原病関連間質性肺炎での臨床応用に関する検討」に関しては、治療前後でのCD161陽性γδT細胞の性質や数の変化などから、有効治療を予測できる可能性を模索するものであるが、末梢血中のCD161陽性γδT細胞であれば可能性はあるが、BALFでの検討は困難が予想される。最も注目すべきは、今年度の結果からすると強皮症患者であり、一定数集めることは簡単ではないが、少しずつでも集めながらデータを蓄積する。上記の通り、実際の患者での研究の進展は簡単でないことも考慮して、基礎的なマウスモデルを用いた研究も進めたいと考えている。間質性肺炎モデルマウスでの種々のデータを蓄積し、それをヒトに応用する可能性も、今後勧めて行こうと考えている。
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Rheumatology
巻: 53 ページ: 2259-2269
10.1093/rheumatology/keu246