研究課題/領域番号 |
26461484
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
奥西 勝秀 群馬大学, 生体調節研究所, 講師 (50401112)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アレルギー / Th2 / Rab27 / 調節性分泌 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまでアレルギーの分野ではあまり注目されてこなかった生理活性物質の調節性分泌機構、特にRab27関連分子に焦点を当て、アレルギー反応におけるそれらの役割を明らかにしようとするものである。 H26年度に、各種血球系免疫細胞に多くのRab27関連分子が発現していることを確認済みであった。そこで、H27年度には、血球系免疫細胞において発現を確認したこれらのRab27関連分子に関して、そのアレルギー反応に対する役割を明らかにする為に、アレルギー疾患の代表例である喘息のマウスモデルの表現型を、各分子の遺伝子欠損マウスと野生型とで比較検討した。その結果、3分子に関して、その分子の遺伝子欠損マウスにおけるアレルギー性気道炎症の増悪を確認した。近年、喘息様アレルギー性気道炎症の誘導において、血球系免疫細胞以外に肺構成細胞も重要な役割を果たすことが明らかになっている。肺構成細胞の中でも特に、サイトカインなどの生理活性物質を分泌することが明らかにされた肺上皮細胞のアレルギー反応における重要性が、最近注目されている。そこで、マウス肺の単細胞懸濁液を作成後、CD45-CD326+肺上皮細胞をFACS sortingにより単離し、これら3分子の発現を調べた。その結果、いずれの分子も肺上皮細胞に発現していることを確認した。次に、各分子の遺伝子欠損マウスにおけるアレルギー性気道炎症の増悪が、血球系細胞におけるその分子の欠損によるものか、それとも、非血球系細胞におけるその分子の欠損によるものかを明らかにする為に、各分子遺伝子欠損マウスと野生型マウスとで骨髄キメラマウスを作製し、喘息モデルの表現型を比較検討した。その結果、3分子のうち2分子に関して、血球系細胞におけるその欠損により喘息様気道炎症が増悪するのに対し、残りの1分子に関しては、非血球系細胞における欠損により喘息様気道炎症が増悪することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度は、群馬大学の動物施設のクリーンナップに伴い、マウスを一時的に実験に使用できなくなり、マウスを用いた実験を予定通りに進めることが出来なかった。その分、H27年度には、マウスを用いた実験を優先的に進めていった。まず、H26年度の時点で血球系免疫細胞における発現を確認したRab27関連分子に焦点をあて、それらのアレルギー反応における役割を検討することとした。血球系免疫細胞には、複数のRab27関連分子が発現していた為、これらの分子のアレルギー反応における役割をスクリーニングする目的で、血球系免疫細胞に発現を認めたRab27関連分子に対して、その分子の遺伝子欠損マウスと野生型マウスとで、アレルギー疾患の代表例である喘息のマウスモデルの表現型の比較検討を行った。その結果、3分子の遺伝子欠損マウスで喘息様気道炎症が増悪することが明らかになった。この結果は、これら3分子が、喘息の発症を抑制する方向に作用している可能性を示唆する。更に、骨髄キメラマウスを用いた検討から、3分子のうち2分子は血球系細胞で作用し、残り1分子は非血球系で作用することで、アレルギー性気道炎症を制御していることを明らかにすることが出来た。 以上、H27年度には、Rab27関連分子の中でアレルギー性気道炎症を制御している3分子を同定し、更に、アレルギー性気道炎症の制御において、血球系細胞、非血球系細胞、どちらの細胞で各分子が主に作用しているかまで明らかにすることが出来た。これらの成果を踏まえ、本申請研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は、H27年度の検討でアレルギー性気道炎症の制御への関与が明らかになったRab27関連分子の中の3分子に関して、その作用機序を解明する為に、次の検討を行う。 1) 各分子が作用する細胞の同定: H27年度に血球系細胞において作用することが明らかになった2分子に関しては、各分子の発現細胞を、野生型マウス及び当該Rab27関連分子の遺伝子欠損マウスから単離し、例えば野生型マウスに移入した際に喘息モデルの表現型に及ぼす変化を検討し、移入により喘息様気道炎症が増悪する細胞を同定する。更に、喘息モデルにおいて、中和抗体等を用いて当該細胞を除去することで、遺伝子欠損マウスの表現型が減弱するかを検討する。一方、主に非血球系細胞で作用することが明らかになった1分子に関しては、非血球系細胞におけるその分子の発現細胞を同定し、次に述べる方法で、発現細胞におけるその分子の機能を評価する。 2) 各分子の機能の評価: 各分子が発現している細胞において、野生型マウス及び各分子遺伝子欠損マウスから当該細胞を単離し、その機能の差異を検討する。即ち、当該細胞における表面マーカーの発現や各種生理活性物質の分泌の違いを比較検討する。そして、野生型マウス由来と遺伝子欠損マウス由来とで機能に明らかな差を認めた細胞に関して、可能であれば、1)で述べた細胞移入及び除去の系が喘息モデルの表現型に及ぼす影響を検討する。また、各分子の欠損により分泌が亢進する生理活性物質を同定した場合は、当該生理活性物質が各Rab27関連分子の遺伝子欠損マウスにおける喘息増悪に果たす影響を評価する為に、当該生理活性物質と各Rab27関連分子両方の遺伝子を欠損したマウスを作製し、喘息モデルの表現型の変化を検討する。更に、各分子と当該生理活性物質との細胞内局在を、蛍光免疫染色法や各種生化学的な手法を用いて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度には、群馬大学の動物施設の改修・クリーンナップが行われ、その結果、マウスを用いた実験を予定通りには行えなかった為、H27年度は、マウスを用いる実験を優先的に行った。その際、本研究において、詳細な検討を行うべき対象分子を絞り込む為、まず、当研究室で所有する多数のRab27関連分子の遺伝子欠損マウスの喘息モデルの表現型のスクリーニングを行った。その結果、3種のRab27関連分子欠損マウスが、喘息モデルにおいて著明な表現型を示すことがわかった。このスクリーニングに用いるマウスの繁殖と実験条件の設定には時間がかかったが、喘息モデルの作製、及びその評価には、それほど多くの試薬や測定キット等を必要とせず、また、科研費以外の資金も一部使用可能であった為、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度は、前述の研究計画を施行する上で、次に挙げるように多くの費用が見込まれ、次年度へ繰り越しとなった金額をそれらに使用する予定である。1) マウス:喘息モデルの表現型確認用以外に、各種細胞単離用・細胞移入用のマウスが必要である。更に、Rab27関連分子と生理活性物質の両遺伝子が欠損した新しいマウスを作製予定であり、多数のマウスが必要となる。2) 試薬:細胞単離や多種の生理活性物質の分泌評価の為に、多くの試薬や、各種生理活性物質の測定キットが必要となる。また、細胞除去用・蛍光染色用の抗体が多種必要となる。細胞培養関連の各種消耗品も必要となる。3) 研究支援者の採用: H28年度は、これまで以上に多数のマウスを用いた実験を行う予定であり、実験を迅速に効率よく進める為に、マウスの交配や繁殖、遺伝子型のタイピング、各種臓器・組織・細胞の採取等を行う研究支援者を採用予定である。
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