研究課題
近年、リンパ球様の形態を呈し、特有のサイトカインを産生する自然免疫細胞が複数同定され、innate lymphoid cell (ILC)と総称されている。特に、IL-5/IL-13などのTh2サイトカインを産生する細胞群はILC2と定義され、マウスの肺や腸管に存在し、IL-25/IL-33に応答し好酸球性炎症の誘導に関与することが示された。さらにIL-17A/IL-22などの炎症性サイトカインを産生するRORγt陽性の自然免疫細胞はILC3と定義され、二次リンパ組織の形成誘導、及び消化管粘膜における生体防御に重要な役割を果たしていることが報告されている。一方、マウスやヒトでは免疫恒常性や免疫寛容の維持において、転写因子Foxp3を発現する制御性CD4陽性T細胞(Treg)が重要な役割を果たしていることが明らかになっている。本研究では、マウスの脾臓、肺、腸間膜リンパ節、パイエル板にFoxp3陽性の非T細胞が存在するという本研究者らの知見(未発表データ)をもとに、1) 新規制御性自然免疫細胞 (仮称:regulatory innate cell;Ireg)の同定、2) Iregの分化・発生機構の解明、3) Iregの特異的細胞表面分子の同定、4) 免疫寛容と炎症性疾患制御におけるIregの役割の解明を行い、Ireg機能の詳細を明らかにするとともに、Iregを応用したアレルギー性炎症疾患の新規治療法の開発に向けた基盤を構築することを目的とする。
2: おおむね順調に進展している
昨年度は以下の実験を行い結果を得た。1. hCD2-Foxp3レポーターマウスの脾臓においてhCD2+ CD3- 細胞の表面抗原をFACSで解析したところB220+MHCII+ CD45.2+ CD44 (+ or -) CD19 (+ or -) cKit- CD4- CD8a- CCR6dull CXCR5- IL7Ra- ICOS- Scan- gdTCR- CD25- FceRI-であった。3. 野生型マウスの脾臓を24時間、IL-21とPMA+Ionomycinで刺激した後、Foxp3+CD3-細胞におけるサイトカイン産生をFACSで解析した。しかしながら、Foxp3+ CD3-細胞においてEBI3, p35, IL-10などの抑制性サイトカインを産生する分画は確認されなかった。4. 野生型マウスにHDM誘導性喘息を惹起し、肺内のFoxp3+ CD3-細胞の割合をFACSで解析したが、コントロールの健常マウスとその割合に差がなかった。5. 一方、hCD2-Foxp3レポーターマウスにpapainを点鼻投与し、自然型アレルギー性気道炎症を惹起した。IAIE+ CD3-細胞におけるFoxp3発現細胞の割合をFACSで解析したところ、脾臓内は健常マウスと差がなかったが、肺内ではわずかにpapain投与後にその発現が増加していた。
今年度は以下の実験の施行し、新たな知見を得る予定である。1. シグナルシークエンストラップ変法(SST-REX法)を用いたB220+ IAIE+ CD3- Iregの特異的細胞表面分子の同定2. papain誘導性自然型アレルギー性炎症におけるIreg特異的細胞表面分子の機能解析3. 喘息患者におけるIregの同定と重症度との関連の解析
研究実施の進行遅延が一部あったため次年度使用額が生じた。
主に物品費として使用予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (1件)
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