研究課題
喘息とCOPDのオーバーラップ症候群は診断が困難であり、増悪頻度が高く気流閉塞の進行が速く予後不良であるが、その病態生理は十分に解明されていない。本研究は、分子生化学的アプローチにより、オーバーラップ症候群の細胞および分子レベルでの炎症プロファイルを明らかにし、疾患特異性の高い炎症分子を同定することで分子機序に基づいた疾患のendotypeの解明を試みることを目的とした。本年度はステロイド未治療の喘息、COPD、オーバーラップ症候群を対象に横断的に症状、呼吸機能、QOL、中枢・末梢気道由来の呼気NO濃度を測定し、血液、呼気凝縮液を採取し、血清および呼気凝縮液中の炎症性分子の網羅的測定を開始した。今後は、吸入ステロイド薬の追加投与の前後で分子発現と症状、呼吸機能、QOLの変化を評価し、ステロイド反応性(感受性・抵抗性)と関連する分子を探索する。また今年度は、喘息における気流閉塞の急速な進行に関連する因子として高齢、増悪、呼気NO濃度高値を同定し、Respir Med誌に報告した。本研究でもオーバーラップ症候群の炎症プロファイルと長期的な増悪と気流閉塞進展との関連を検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、60歳以上でステロイド未治療の喘息、COPD、オーバーラップ症候群を50症例登録し、全例でベースラインにおける症状、呼吸機能、QOLの評価および呼気NO濃度測定、呼気凝縮液の回収を終えた。また、ステロイド介入後の検体採取についても大半の症例で終了しており、研究はおおむね順調に進展していると考える。現在は呼気凝縮液中の分子解析を開始している。また呼気NO濃度とステロイド反応性の関連性を見出している。
オーバーラップ症候群の頻度は高いが、本研究は60歳以上を対象とし、既治療例が多いため、横断研究における症例登録は平成26年度以降も継続して行う。今後の研究計画として、横断研究後も経時的に呼吸機能や血液・呼気の炎症分子を測定するとともに、経年的な気流閉塞の進行や増悪について2~3年間の長期的な観察を行い、炎症分子発現と疾患の長期予後との関連について前向きに検討する。オーバーラップ症候群の補助診断や管理の指標に有用なバイオマーカーの確立を目指す。
本年度は呼気凝縮液中の炎症分子測定用のmultiplex systemの機器整備を要したために、消耗物品としての分子測定キットの購入を待機したことにより次年度使用額が生じた。
標的とする分子測定キットは既に選定済みであり、速やかに購入し、分子の定量的測定を追加実施する予定である。
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