研究課題
喘息とCOPDのオーバーラップ症候群は診断が困難であり、増悪頻度が高く気流閉塞の進行が速く予後不良であるが、その病態生理は十分に解明されていない。本研究は、分子生化学的アプローチにより、オーバーラップ症候群の細胞および分子レベルでの炎症プロファイルを明らかにし、疾患特異性の高い炎症分子を同定することで分子機序に基づいた疾患のエンドタイプの解明を試みることを目的とした。平成26年度はステロイド未治療の喘息、COPD、オーバーラップ症候群を対象に横断的に症状、呼吸機能、QOL、中枢・末梢気道由来の呼気NO濃度を測定し、血液、呼気凝縮液を採取し、血清および呼気凝縮液中の炎症性分子の網羅的測定を開始した。平成27年度より、吸入ステロイド薬の追加投与の前後で分子発現と症状、呼吸機能、QOLの変化を前向きに評価し、ステロイド反応性(感受性・抵抗性)と関連する分子を探索している。また、喘息を対象とした観察研究において、重度増悪の存在とステロイド治療に関わらず持続する呼気NO濃度の上昇が急速な気流制限の進行と関連することを見出し、JACI in pract誌およびAllergol int誌に報告した。当該研究でもオーバーラップ症候群の炎症プロファイルや増悪と気流閉塞進展との関連を検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度は、60歳以上でステロイド未治療の喘息、COPD、オーバーラップ症候群を50症例登録し、全例でベースラインにおける症状、呼吸機能、QOLの評価および呼気NO濃度測定、呼気凝縮液の回収を終えた。また、平成27年度はステロイド介入後の検体採取について登録症例で進めて、呼気凝縮液中の分子解析を開始している。研究はおおむね順調に進捗していると考える。これまでの解析で、中枢および末梢気道由来の呼気NO濃度とステロイド反応性の関連性を見出している。
今後の研究計画として、経時的な呼吸機能や血液・呼気中の炎症分子の測定データと経年的な気流閉塞の進行や増悪についての関連性を検討し、炎症分子発現と疾患の長期予後との関連について前向きに解析する。オーバーラップ症候群の補助診断や管理の指標に有用なバイオマーカーの同定を目指す。
所属研究機関の変更に伴い消耗物品の購入や研究成果発表が予定通りに遂行できなかったため次年度使用額が生じた。
現在の研究機関において当該研究の遂行は可能である。データ解析を継続するとともに、学会発表と論文を通じて研究成果を発信する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件、 招待講演 6件) 図書 (2件)
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