研究課題/領域番号 |
26461491
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
新江 賢 杏林大学, 保健学部, 講師 (50306669)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | キチン / アレルギー |
研究実績の概要 |
申請者は、マウスにおいて、タンパク質抗原単独ではアレルギーは誘導されないが、ダニの外殻構成成分「キチン」の存在下では、IL-33の発現誘導を介して、IL-4/13-STAT6経路依存的なアレルギー応答が惹起され、この応答はIL-33欠損マウスでは顕著に抑制されることを見いだした。そこで、本研究では、キチンによるアレルギー誘発機序の解明を目的とする。 これまでに、キチンは単独では骨髄由来樹状細胞(BMDC)を活性化しないが、IL-33存在下ではIL-1bの産生を強く誘導することを見出している。 IL-1bはTh2細胞の活性化にも関わるため、キチン+IL-33刺激により樹状細胞から産生されるIL-1bが、Th2細胞の誘導促進とそれに続くアレルギー応答誘導に関わっている可能性がある。そこで、野生型およびIL-1a/b欠損マウス由来のBMDCをキチン+IL-33で刺激し、その後、OVA特異的T細胞受容体を発現するOTIIマウスのT 細胞とOVAペプチド存在下で共培養することにより、BMDC由来IL-1bのTh2細胞活性化に対する効果についてin vitroで検討した。キチンもしくはIL-33単独で刺激した野生型マウス由来BMDCと比べて、キチン+IL-33で刺激した野生型マウス由来BMDCでは、共培養後のOTIIマウス由来T細胞によるIL-13産生が有意に増加した。この時、Th1細胞由来のIFN-gやTh17細胞由来のIL-17といったサイトカインは、いずれの刺激においてもほとんど産生されなかった。また、キチン+IL-33で刺激したIL-1a/b欠損マウス由来BMDCでは、野生型マウス由来BMDCのようなIL-13産生の有意な増加は観察されなかった。この結果から、キチン+IL-33刺激により樹状細胞から産生されるIL-1が、抗原特異的なTh2細胞の活性化を促進できることが明らかとなった。そこで現在、キチン+IL-33刺激により樹状細胞が産生するIL-1が、アレルギー応答誘導に関与するかどうかについてin vivoで検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請書の研究計画において1.キチン及びIL-33の標的細胞の同定と活性化機構の解明、2.キチン受容体の同定およびシグナル伝達経路の解明を目的としている。1.に関して、キチンの標的細胞の一つである樹状細胞は、IL-33存在下でキチンによる刺激を受けると、抗原特異的なTh2細胞の活性化をIL-1依存的に増強できることを明らかにした。しかしながら、キチン+IL-33刺激により樹状細胞が産生するIL-1が、実際にアレルギー応答誘導に関与するかどうかの検討が終了していないため。また、2.に関して、TLR2及びDectin-1以外の新規受容体が、キチン+IL-33による樹状細胞の活性化に関与する可能性が示唆されているが、新規受容体の同定には至っていないため。
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今後の研究の推進方策 |
1.キチン及びIL-33の標的細胞の同定と活性化機構の解明に関して、キチン+IL-33刺激により活性化した樹状細胞が、Th2細胞の活性化をIL-1依存的に増強することを明らかにした。しかしながら、キチン+IL-33で刺激した樹状細胞が、in vivoでIL-1依存的にアレルギー応答を誘導できるかは不明である。したがって、IL-33受容体(IL-1RL1, ST2)欠損マウスに野生型マウス由来BMDC、ST2欠損マウス由来BMDC、もしくはIL-1a/b欠損マウス由来のBMDCを経鼻的に投与することにより移入再構築し、OVA+キチンによるアレルギー性気道炎症の評価を行う。2.キチン受容体の同定およびシグナル伝達経路の解明に関して、TLR2及びDectin-1以外の新規受容体が、キチン+IL-33による樹状細胞の活性化に関与する可能性が示唆されている。キチン受容体はキチン結合性を有していると想定されることから、肺及びBMDC中のキチン結合タンパク質を、キチンビーズカラムを用いて精製及び同定する。さらに、同定されたキチン結合タンパク質について、siRNAもしくは遺伝欠損マウス由来BMDCを用いて機能解析を行い、樹状細胞の活性化に関わるキチンの機能的受容体を同定する。最終的には、キチン受容体遺伝子欠損マウスにおいて、OVA+キチンによるアレルギー性気道炎症の評価を行う。
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