研究課題/領域番号 |
26461493
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
大澤 勲 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (60407252)
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研究分担者 |
恩田 紀更 順天堂大学, 医学部, 助教 (60465044)
井下 博之 順天堂大学, 医学部, 助教 (80646117)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 遺伝性血管性浮腫 / C1-inhibitor / ブラジキニン / アンジオテンシン転換酵素 / アミノペプチダーゼP / DPP-IV |
研究実績の概要 |
1.本邦における遺伝性血管性浮腫(HAE)患者171名の臨床データを得ることができた。血管性浮腫(AE)の家族歴は76%に認め、11%の症例にHAEの発作による窒息死を起こした血縁者がいた。また、初発症状出現からHAEの診断までは平均で13年が経過しており、認知度が低く重症例が存在する疾患であることが分かった。AEの発作による患者の生活の質への影響は大きく、発作による欠席欠勤、入院が多く見られた。一方発作時の治療にC1-inhibitor製剤が用いられたのは、47%程度の症例で、治療法の浸透も低かった。これらの結果は、欧州アレルギー臨床免疫学会での発表でポスター賞を授与し、論文はAnn Allergy Asthma Immunolに掲載することができた。 2.HAE患者20名32検体(非発作時:18検体、発作時:14検体(非腹痛発作/腹痛発作=8/6))と健常人の血清を採取し冷凍保存した。対象患者には、3回の非発作時血清を採取した1名、2回の非発作時血清を採取した1名、1回の非発作時血清と2回の発作時血清を採取した1名、1回の非発作時血清と1回の発作時血清を採取した3名、3回の発作時血清を採取した1名、2回の発作時血清を採取した2名が含まれていた。前年度に確立した測定法を用い、BK分解酵素であるneprilysin(NEP)、angiotensin-converting enzyme(ACE)、carboxypeptidase N(CPN)、dipeptidyl peptidase-4(DPP-4)、aminopeptidase 1 (APP1)、 aminopeptidase 2 (APP2)の酵素活性を測定した。また、全患者の血清C4・C1-inhibitor・C1q値を測定し、酵素活性の結果と比較検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.欧米諸国では、HAE患者の臨床データが集約・蓄積されていて、詳細な検討結果から新薬の開発にもつながっている。今回我々は本邦で初めてHAEの臨床像を明らかにし、世界に向けて情報を発信できた。国際的にも評価を受け、今後の医療環境の充実に重要なエビデンスとなった。 2.基礎的実験については、試行錯誤の末に、ブラジキニン分解酵素群の測定系が確立できた。患者血液の採取数は目標数に達しなかったが、希少疾患であるため限界と考えられる。 3.HAE with normal C1-inhibitor症例については、現在のところ発見されていない。
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今後の研究の推進方策 |
HAE患者の臨床像が明らかとなり、基礎的研究の進捗にも成果が得られたため、さらに深い検討を進める。最終年度の研究方針は次の二点である。 1.HAE患者の鑑別疾患として重要なMast cell mediated-angioedema症例との臨床的な比較により、実臨床での簡便な鑑別法を検討して発信する。 2.ブラジキニン分解酵素群の活性測定結果の比較検討と、臨床症状を加味した意義を検討して発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ブラジキニン分解酵素群の活性測定法の開発に必要な物品が予想よりも少なく済んだため、当該助成金に余剰が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度は、測定結果の再検討のために再度物品が必要となる可能性と、得られた結果の解析に書物やコンピュータソフトなどの購入が必要となるため、平成28年度助成金と合わせて使用する予定である。
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