研究課題
平成26年度は,DN-MafB発現遺伝子改変(DN-MafB Tg)マウスによるBCG感染モデルの作製を試みた。当教室で確立した肺特異的CCL1発現遺伝子改変マウスに対するBCG感染実験方法と同様の手法で実施した。すなわち,感染モデルの作製には,10~12週齢の野生型マウスおよびDN-MafB Tgマウスが用いられた。乾燥BCGワクチン溶解液(日本化薬)を1匹あたり5×10^6 CFUに調整して気管内投与した。その後,28日目にサンプリングを行って,感染肺の組織像をHE染色で評価した。その結果,BCG投与後の体重増加率は,野生型マウスおよびDN-MafB Tgマウスでは差がなかった。肺組織像を確認したところ,野生型マウスおよびDN-MafB Tgマウスいずれにおいても,両肺に肉芽腫が形成されていた。肉芽腫数を比較すると野生型マウスよりもDN-MafB Tgマウスの方が少ない傾向にあった(1切片あたり平均206.8 vs. 163.6)。さらに,肉芽腫を含む肺組織中でのBCG菌体の有無を鏡検で確認した。抗酸菌染色(チール・ニールセン染色)では肉芽腫の内部に少数の菌体が確認された。一方,乾燥BCGをFITCで蛍光染色してから経気道感染させて同様に観察したが,こちらは鏡検での確認が困難であった。また,感染肺胞マクロファージの細胞死および貪食能を評価するため,まず細胞実験を行った。実験にはマウスマクロファージ細胞株RAW264.7細胞の他に,MafB過剰発現細胞,shMafB発現細胞を用いた。それぞれの細胞をBCGで刺激してから,Annexin Vと7-AADで二重染色し,フローサイトメトリーでアポトーシスを解析した。さらに,RAW264.7細胞に蛍光ポリスチレンビーズを添加してフローサイトメトリーで貪食能を評価したが,いずれも予備実験としての条件設定がほぼできたところである。
3: やや遅れている
本研究では,転写因子MafBにより制御されるマクロファージの機能が,結核菌の細胞内感染および生存・増殖に与える影響について検討することを目的としている。この目的を達成するために,平成26年度はBCG感染マウスモデルの作製を主な目標としていた。今回,BCGを野生型マウスおよびDN-MafB Tgマウスに経気管投与することにより,両肺へのBCG感染が確認できた。すなわちBCG感染マウスモデルを研究に使用することが可能となった。しかし,BCGの生菌を培養する系がまだ準備できていないため,当初の計画から若干の遅れが生じている。また,BCGの蛍光染色を試みているが,まだ安定した結果が出ていない。このため,BCG感染肺胞マクロファージをフローサイトメトリーで解析することができなかった。以上より,現在までの達成区分を「やや遅れている」とした。
本研究課題の今後の推進方策については,基本的にはBCG感染モデルを用いた実験を中心に研究計画に沿って進めていく。BCGの蛍光標識がうまくいかない場合には,フローサイトメトリーだけではなく,免疫染色などの方法も併用していくこととする。また,当教室ではマクロファージ培養細胞株RAW264.7細胞から樹立したMafB過剰発現細胞およびMafBノックダウン細胞(shMafB発現細胞)を所有しているので,研究計画にもある通りこれらの細胞株を用いた基礎実験も進めていく。具体的には,BCGで刺激された場合の貪食能や細胞死(アポトーシス,オートファジーなど)を調べる予定である。
購入の際,見込みの金額よりも安く購入できたため,3,486円の余剰が生じた。
次年度の実験器具購入費に充てて使用する予定である。
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Nature
巻: 514 ページ: 450-454
10.1038/nature13807