研究課題/領域番号 |
26461498
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
阿部 修一 山形大学, 医学部, 非常勤講師 (40400543)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | MafB / マクロファージ / 貪食能 / Fcgr3 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,昨年度の予備実験を踏まえて,マクロファージの貪食能における転写因子MafBの役割とそのメカニズムを評価した。 マウスマクロファージ細胞株RAW264.7細胞にMafB-shRNAを遺伝子導入した細胞(RAW264.7-MafB-shRNA)を作成した。コントロールとしてshRNAベクターのみを導入した細胞(RAW264.7-control-shRNA)を用いた。Phycoerythrin (PE) でラベルされた蛍光ポリスチレンビーズをIgGでコーティングしてから(すなわちオプソニン化してから)各細胞に添加して,フローサイトメトリーおよび蛍光顕微鏡を用いて貪食能を評価したところ,RAW264.7-MafB-shRNAではRAW264.7-control-shRNAと比較して貪食能は有意に低下していた。すなわち,MafBの発現を抑制することでRAW264.7細胞の貪食能が抑制されることが示された。この実験系では,Fcレセプターを介した貪食能を見ていることから,FcレセプターのコンポーネントであるFcgr2bとFcgr3に対してMafBがどのように影響を及ぼすか,について着目した。マクロファージ細胞株におけるFcgr2bとFcgr3のmRNA発現レベルを定量的real-time PCRで確認したところ,Fcgr2b mRNAはRAW264.7-control-shRNAでもRAW264.7-MafB-shRNAでも変化はなかったが,Fcgr3 mRNAはRAW264.7-control-shRNAと比べてRAW264.7-MafB-shRNAで低下していた。細胞表面のFcgr2bとFcgr3の抗原発現を見てみると,mRNAと同様にFcgr2bは変化しなかったが,Fcgr3はRAW264.7-control-shRNAと比べてRAW264.7-MafB-shRNAで低下していた。さらに,RAW264.7-MafB-shRNA細胞にFcgr3遺伝子を強制発現させてフローサイトメトリーで貪食能を確認したところ,オプソニン化された蛍光ポリスチレンビーズの貪食能はFcgr3遺伝子の強制発現により増加した。 以上の結果から,MafBはFcgr3を介してマクロファージの貪食能を制御することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,転写因子MafBにより制御されるマクロファージの機能が結核菌の細胞内感染および生存・増殖に与える影響について検討することを目的としている。この目的を達成するために,BCG感染マウスモデルの実験系を確立し,さらに平成27年度はマクロファージ特異的MafB発現遺伝子改変マウスの作製を計画していた。しかし,BCGの生菌を扱う実験系が若干不安定であり,このため新たな遺伝子改変マウスの作製にまで着手できなかった。そこで,動物実験系と並行してMafBによるマクロファージの機能制御の細胞内メカニズムの解析を進めることとして,平成27年度は貪食能の解析を中心に実施した。 以上より,現在までの達成区分を「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策については,引き続きBCG感染モデルを用いた実験を研究計画に沿って進めることを目標とする。しかし,もし動物実験系が不安定である場合,研究の中心をマクロファージ培養細胞株(MafB過剰発現細胞,MafBノックダウン細胞など)を用いた基礎実験にスイッチすることについても臨機応変に検討・対応したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定されていた予算はほぼ使用したが、18,903円とわずかに残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度に消耗品購入に使用する予定である。
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