研究課題
マクロファージは細菌などの異物を細胞表面の受容体で認識する。そして、認識後に細胞内に貪食をすることで、生体内から異物を除去している。生体内では、異物に対して免疫グロブリンや補体などが結合するが、これらが、結合することによって、マクロファージの細胞表面に存在するFc受容体を介して、異物の認識はさらに容易となる。細胞分化には分化促進転写因子の発現が重要である。MafBはマクロファージの分化促進転写因子として知られている。我々はマクロファージ細胞株RAW264.7細胞にMafB-RNAiにて機能が抑制される細胞株(RAW264.7-MafBshRNA)を作成した。そして、これまでにMafBがマクロファージの異物貪食を促進することを報告した(Plos One 2013)。しかし、その現象がどのような機序で起こされているのかということは不明であった。そこで、MafBが細胞表面のFc受容体発現を亢進し、異物貪食が亢進するという仮説を立てた。RAW264.7-MafBshRNA細胞では、オプソニン化されたビーズに対する貪食がコントロールに比して低下していることが、蛍光顕微鏡による観察とフローサイトメトリーで確認された。そして、RAW264.7-MafBshRNA細胞ではFcgr3遺伝子発現がコントロールに比して有意に少ないことをrealtime PCRで確認し、抗体を用いたフローサイトメトリーで、細胞表面のFcgr3受容体数が減少していることを確認した。そして、RAW264.7-MafBshRNA細胞に対して、プラスミドベクターを用いて、Fcgr3遺伝子を強制発現させることで、低下していたオプソニン化ビーズに対する貪食が改善することが示された。すなわち、本研究によって、MafBがFcgr3の発現を制御することで、マクロファージにおける異物貪食を制御しているという機序を発見した。
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 482 ページ: 375-381
10.1016/j.bbrc.2016.11.070