インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)は、小児の中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、肺炎等の起因菌であり、我が国の小児中耳炎の起因菌のうち24.2%を占める重要な病原細菌である。近年、インフルエンザ菌のベータラクタム系薬耐性が進んできたが、これまではベータラクタム系薬のうち、臨床現場で切り札として使用されるカルバペネム系薬には良好な感受性を示してきた。今回、申請者らは、カルバペネム系薬全般に感受性が低下したインフルエンザ菌を分離した。本研究計画では、このカルバペネム系抗菌薬低感受性インフルエンザ菌のカルバペネム低感受性機構を明らかにし、インフルエンザ菌においてカルバペネム耐性が始まりつつあることを報告し、臨床現場に注意を促すことで医療現場に還元することを目的としている。カルバペネム低感受性インフルエンザ菌におけるPeneicillin-binding proteinの役割を解明するため、インフルエンザ菌における遺伝子操作の方法の確立、Peneicillin-binding proteinの大腸菌での大量発現、精製法の検討を進めている。種々の試行錯誤の結果、インフルエンザ菌における遺伝子操作の方法はほぼ確立でき、当初の仮説をサポートする結果も得られ、順調に進んでいるが、Peneicillin-binding proteinの大腸菌での大量発現、精製法など、まだ、解決しなければならない課題もあり、鋭意、実験を進めている。
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