現在、世界中で約1億7千万人のHCV(C型肝炎ウイルス)キャリアーが存在し、インターフェロンや抗ウイルス薬によりC型慢性肝炎の治療成績は向上したものの、その根治率はいまだ満足のいくものではない。HCVウイルスの排除にはHCV非構造タンパクNS3に対する細胞性免疫が大きな役割を果たしていることが報告されており、現在までに我々は、プロバイオティクスであるビフィズス菌の表層にHCVのNS3タンパクをディスプレイした新しいC型慢性肝炎経口ワクチンを作製し、マウス実験モデルにてNS3特異的なIgG抗体およびTh1反応の誘導を確認した。また、C型慢性肝炎治療法の開発研究として、NS3タンパク発現マウス腫瘍モデルを用いて、本ワクチンによる治療効果やインターフェロン(INFα)併用療法の相乗効果等を確認した。 NS3タンパク発現腫瘍モデルを作製し、本経口ワクチンおよびINFαの併用により、NS3特異的な細胞性免疫の誘導、およびNS3発現腫瘍に対する、経口ワクチン、IFNα、双方の抗腫瘍効果及び併用による相乗効果を確認した。また、実用化に伴うLMO(遺伝子組換え生物)拡散防止の観点から、本ワクチンを加熱殺菌した際の有効性の確認を上述の動物実験等で実施した。ビフィズス菌は比較的加熱に弱い細菌であり、抗原、接着因子などの主要なタンパク構造を保持したまま加熱殺菌が可能でNS3タンパク等が過熱後も保持されていることをWestern Blotting等で確認した。また加熱殺菌後もワクチン効果、INFαとの併用効果が弱まらないことをNS3発現マウス皮下腫瘍モデルを用いて確認した。 以上の結果により、本経口ワクチンとIFNαの併用療法が、慢性C型肝炎の新たな治療法としての大きな可能性を有していることが示された。
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