研究課題/領域番号 |
26461504
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
松崎 茂展 高知大学, 教育研究部医療学系, 准教授 (00190439)
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研究分担者 |
内山 淳平 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (20574619)
大畑 雅典 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (50263976)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ピロリ菌 / バクテリオファージ |
研究実績の概要 |
ピロリ菌は、慢性胃炎、胃潰瘍の原因菌であり、胃がんのリスクファクターとして知られている。しかし、日本国内の50歳以上の成人の50%以上がが本菌を保菌しているにもかかわらず、上記疾患を発症している人の割合は僅かである。これは本菌による発症に、バクテリオファージ(ファージ)等の菌外因子が関与している可能性を強く示唆している。我々は、最近、新しいタイプのピロリ菌ファージKHP30を見出した。本研究では、KHP30ファージの病原性およびピロリ菌遺伝子の水平伝播へのへの関与を検討することを主目的としている。 本実験を遂行するにあたり、KHP30のピロリ菌株依存的な感染能の変動の様式を十分検討する必要があることが明らかになった。KHP30を複数のピロリ菌株に感染させたとき、プレートあたりプラーク数が数個から1,000,000ほどの桁で変動した。しかし、数個しかプラークを形成しない場合でも、その株で増殖したKHP30は、その株に適応しプラーク形性能が著しく改善された。しかしこの現象は可逆的であり、制限修飾系に類似するシステムが、ピロリ菌には複数存在することが示された。それに加え、制限修飾系のように可逆的なシステムではなく、遺伝子変異を伴うKHP30の適応現象が存在することも明らかとなった。 以上から、ピロリ菌においては、ファージ感染に対する非遺伝的および遺伝的な複雑な防御システムが存在すると予想された。本知見により、KHP30のピロリ菌の病原性発現への関与、およびピロリ菌遺伝子の水平伝播に関する実験を遂行するために必要な情報を得るることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で使用するピロリ菌ファージKHP30について、宿主菌株に大きく依存してその感染能を変動させるという適応現象が存在することが明白になった。それゆえ、KHP30感染ピロリ菌の胃培養細胞への感染実験、およびピロリ菌株間における遺伝子の水平伝播実験を遂行するにあたり、KHP30のピロリ菌株に対する本現象の解明を行なうことが必須であると考えられ、そのための時間を要した。しかし、ここで得られた情報を元に、次年度の実験を速やかに遂行できると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、KHP30感染ピロリ菌株の胃上皮細胞へのin vitro 感染実験、およびピロリ菌間における遺伝子の水平伝播に関する研究を行なう。(1)KHP30保有ピロリ菌株を胃上皮の培養細胞に付着させ、形態学的変化を検討する。(2)KHP30保有ピロリ菌株の細胞質から、KHP30DNAあるいはそれから産生されたタンパク質の、胃上皮細胞への移行について検討する。(3)ファージ自体を胃の上皮細胞に添加し、上皮細胞の形態学的生理学的変化を検討する。(4)薬剤耐性を付与したピロリ菌株にKHP30を感染させ、同じ適応系を保有する他の菌株に感染させ、薬剤耐性遺伝子の他菌株への移行を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画の遂行のために、ピロリ菌ファージKHP30の宿主感受性に関して詳細な検討を行なう必要が生じたため、ピロリ菌および本ファージに感染したピロリ菌の胃上皮細胞との相互作用の解析の大分が、次年度に繰り越されることになったため、それに必要な試薬類、器具類の購入分の費用が次年度に繰り越されることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、前年度の実績に基づき、ファージを保有するピロリ菌と胃上皮細胞との相互作用に関する実験が可能となり、本実験をを遂行するための細胞株購入や必要試薬、器具の購入する必要があり、本年分の大部分を使用する予定である。
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