研究課題
本研究では、ファージを利用する薬剤耐性ピロリ菌(Helicobacter pylori)の胃からの除菌システム構築のために必須な、ピロリ菌保有のファージ排除システムである、制限-修飾系の分布状況、強度、種類について、更に検討を進めた。制限-修飾系の存在は、各菌株で増殖させたKHP30を、増殖株および他の菌株でプラーク形成を行わせ、増殖株におけるプラーク数と、試験株のプラーク数の相違により検討した。その結果、(1)KHP30に対し、何ら制限-修飾が認められない菌株、(2)典型的な制限-修飾現象が認められる株ペア、すなわちKHP30に対して2つの異なる制限-修飾系を1個づつ保有している、そして(3)1つの菌株に、2-3個の制限集所化有していると想定される菌株群が検出された。次に、制限-修飾系を保有することが予想された各菌株で増殖させたKHP30からDNAを抽出し、4塩基認識の制限酵素で反応させ、切断の有無を検討した。その結果、大多数の制限-酵素は、増殖菌株の違いによるファージDNAの切断パターにはほとんど違いがみられなかったが、1種の制限酵素が全く切れなくなっている事例と、制限-酵素の断片の一部に変化が起きている事例が認められた。これらは、ピロリ菌保有の制限-修飾系の認識部位を示している可能性があり、現在更に検討を続けている。以上から、ピロリ菌には複数の機能的な制限-修飾系が存在しており、ファージによるピロリ菌の効果的除菌のためには、ファージをこれらすべての制限-修飾系に適応しておく必要があることが、強く示唆された。
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