研究課題/領域番号 |
26461505
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鄭 湧 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60721264)
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研究分担者 |
池松 秀之 九州大学, 大学病院, 研究員 (30521182)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インフルエンザ / 抗原変異 / ワクチン |
研究実績の概要 |
平成26年度では、次世代シーケンサーを用いたインフルエンザウイルスの全ゲノム解析を安定して行うための基礎的準備及び実際にインフルエンザウイルスA/H3N2 96株の全ゲノムシークエンスを施行しえた。日本各地より採取された2011/12年度,2012/13年度流行のA/H3N2 96株の解析から、接種者、未接種者共通の変異では、12/13年度の解析から、エピトープAA145、AA278に変異を有する株が接種者で有意に多かった。これは、ワクチン接種が流行株の選択に影響を与えている可能性を示唆しており、平成27年4月の日本感染症学会総会にて報告した。 平成27年度では、さらなる知見を得るために、2013/14年度流行株 A/H3N2 33株の解析を追加した。この結果、3シーズンでワクチン株と異なるHA1 部位は53部位検出されるものの、この内、次年度にdominantとなった部位は、5箇所のみであることが判明した。この内、4部位は 48I-278K、128A-142Gと2つのアミノ酸部位が連動していた。興味深いことに、これらの部位でのアミノ酸変異の検出は、ワクチン接種者に有意に多く、3シーズンの解析を通して、ワクチン接種が流行株の選択に影響を与えている可能性が強く示唆され、今後の変異株予測に有用である可能性も考えられた。これらの知見はこれまでに報告がなく、論文にまとめ現在投稿準備中である。 さらに、平成27年度では、全ゲノム解析の有用性を生かすため、ノイラミニダーゼ(NA)遺伝子の解析を施行し、ゲノム分節間の関連について検討中である。解析の一部ではあるが、NA-HA間でアミノ酸変異に関連、連動があることがわかり、抗原連続変異部位として、HAのみでなくNAについても、免疫から逃れるための抗原変異として役割を果たしている可能性があることが分かり、今後のワクチン開発、戦略上有益な情報と考えられた。この知見について、平成28年4月の日本感染症学会総会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の平成26年度の目標として、上記のように、次世代シーケンサーを用いたインフルエンザウイルスの全ゲノム解析を安定して行うための準備を完了することであったが、これを終了し、さらに実際に2シーズン分A/H3N2株100株程度のHA解析を施行しえた。平成27年度には、1シーズン分の解析を追加し、流行株選択におけるワクチン接種の影響について、より確実な知見をえることができている。さらに当初の計画のとおり、全ゲノム解析の特性を生かすため、NA遺伝子の解析に着手し、解析途上ではあるが、NA-HA間に変異の連携があるという興味深い知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
3シーズン分のHA遺伝子にて、ワクチン株を対象としたアミノ酸変異部位解析を行い、ワクチン株からの変異部位が流行の主たる遺伝子変異であること、したがって、ワクチン接種者にこの流行の中心となる変異が有意に検出されることが分かった。ここまでのデータで現在論文を作成しており、投稿予定である。今後は、解析年数を増やしこの知見を検証した上で、論文化を図る予定である。さらに、全ゲノム解析を施行しており、NA解析、HAとの連携解析を進めるとともに、その他の分節遺伝子の解析も進める予定である。
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