研究実績の概要 |
研究1によって、一般住民におけるC型肝炎ウイルス(HCV)自然排除の検討を行った。インターフェロン高感受性遺伝子多型のIL28B TTは男性83.3%、女性82.6%で性差はなく、年齢別での差も認められなかった。同地区のHCV抗体陽性率は29.3%と高率で、HCV抗体陽性例中のIL28B TT 80.2%は、同抗体陰性例中の83.8%と差がなかった。HCV抗体陽性243例中、抗HCV療法を受けた57例を除外した、186例中HCV RNA陽性は136例、73.1%であった。HCV抗体陽性中の解析で、HCV RNA陽性例のIL28B TT 74.3%は、同陰性の98.0%に 比べ有意に低率であった。本邦でのHCV感染の高浸淫地区での大規模調査によって、インターフェロン治療効果を左右するIL28B遺伝子多型は一般住民でのHCV自然排除にも関与することが示唆された。さらに、研究2によって、HCV自然排除とIL28B遺伝子プロモーター領域の関連の検討を行った。10回以上のTA repeatはHCV自然排除に有意に相関していた。多変量解析により、HCV自然排除と相関する因子は、女性、IL28 SNP TT型、長いTA repeat多型であった。人種別検討で、長いTA repeat多型は、日本人(OR=10.7, P=0.022,)およびアフリカ系アメリカ人(OR = 3.70, P=0.027)でHCV自然排除と関連が認められた。日本人だけではなく、HCV自然排除においてIL28B SNPのみならず、TA repeatも人種を超えて関与していることが示唆された。 Il28B遺伝子多型のタイピングに加えてTAリピートを用いることで、HCV自然排除の予測精度がさらに高まる。したがって、輸血、違法静脈注射、いれずみ、病院内での針刺事故などによって発症するC型急性肝炎から慢性肝炎への持続感染の際に、本タイピングを利用することで治療などが不必要になる可能性がある。
|