研究課題
急速な神経細胞変性をきたす致死性の疾患、プリオン病。その代表的な病気である孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)はタイプにより予後の進行状況が異なる。本研究の目的は、孤発性CJDのタイプ分けを早期に鑑別可能とするパネルRT-QUIC法を構築することである。RT-QUIC法は、異常型プリオン蛋白(PrP)を試験管内で増幅させる方法であり、超微量の異常型PrPを数日で検出可能とする。本法は基質としてリコンビナントPrP(recPrP)を要するが、RT-QUIC法はこのrecPrPの配列に依存すると考えられている。そこで様々な変異recPrPを構築・精製し、プリオンタイプ特異的RT-QUIC法を導き出す。前年度までに、一アミノ酸置換型recPrPを数種類構築・精製し、様々なプリオン株(タイプ)を用いてQUIC反応を試みた。興味深いことに、マウス順応スクレーピー株においてrecPrPの変異箇所の違いによりQUIC法感受性において異なる結果が得られた。しかしながら、ヒトプリオン病、CJD患者の髄液を上記QUIC法に用いたところ、目立った違いはみられなかった。そこで平成28年度は、アミノ酸部分欠失型recPrPを数種類構築・大量精製した。これらリコンビナントを用いてCJD患者由来脳乳剤のQUIC反応を試みたところ、リコンビナントやプログラム条件により、個々の脳乳剤間でわずかではあるがQUIC法感受性に様々な違いがみられた。この現象が如何にして得られるかを確かめるために、さらに細かく欠失させたリコンビナントを設計・構築した。今後、これらのリコンビナントを大量精製し、様々なCJDタイプの脳乳剤に対するQUIC反応に用いることでどのような結果が得られるかを検討する。最終的には、孤発性CJDのタイプを診断可能とする組み合わせ(パネルRT-QUIC法)を導き出す。
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