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2015 年度 実施状況報告書

クリプトコックスに対する免疫応答の解明と、菌の臓器指向性と免疫応答の関係の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26461508
研究機関長崎大学

研究代表者

河野 茂  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (80136647)

研究分担者 泉川 公一  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (20404212)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード中枢神経クリプトコックス症 / Cryptococcus neoformans / Cryptococcus gattii / 抗GM-CSF抗体 / GM-CSF / STAT5
研究実績の概要

免疫低下が見られていない宿主での中枢神経クリプトコックス症発症において、抗GM-CSF自己抗体の関与が示唆されている。今回、健常人と中枢神経クリプトコックス症患者の血漿中の抗GM-CSF自己抗体の有無を検証した。また、GM-CSFは転写因子であるSTAT5をリン酸化し、リン酸化されたSTAT5が様々な遺伝子の発現を誘導する。抗GM-CSF自己抗体を含有する血漿がGM-CSFを機能的に阻害するかどうかについては、GM-CSFによるSTAT5のリン酸化が抗GM-CSF自己抗体を含有する血漿の存在下で阻害されるかどうかで検証した。
抗GM-CSF自己抗体の有無を、中国人健常者20名、中国人およびオーストラリア人の中枢神経クリプトコックス症患者30名で検証した。中枢神経クリプトコックス症の原因真菌としては、Cryptococcus neoformansが21名、C. gattiiが9名であった。抗GM-CSF自己抗体が陽性であったのは、健常者のうち1名、中枢神経クリプトコックス症患者のうち7名で、この7名の患者ではいずれもC. gattiiが原因真菌であり、C. neoformansによる中枢神経クリプトコックス症患者には抗GM-CSF自己抗体を有する症例は認めなかった。また、クリプトコックス症患者由来の抗GM-CSF抗体含有血漿は、GM-CSFによるSTAT5のリン酸化を阻害したが、健常者由来の抗GM-CSF含有血漿は、部分的な阻害に留まった。以上から、抗GM-CSF自己抗体によるGM-CSFの阻害は、C. gattiiによる中枢神経クリプトコックス症において有意な誘因であると考えられた。
また、1977年から2012年の35年間で経験した非HIVに合併した肺クリプトコックス症の151症例について、基礎疾患や髄膜炎を含む合併症、検査結果などの臨床的特徴を多角的に解析し、報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

クリプトコックス症に対して抗GM-CSF抗体の関与が考えられること、また、抗GM-CSF抗体がC. gattiiの症例に有意に多かったことが示唆された。これは、クリプトコックス感染症に対してGM-CSFが感染防御に重要な役割を果たしており、また、C. neoforman感染とC. gattii感染の2群間で免疫応答に差があることを示唆する所見であり、今後の免疫応答の解明を行なっていく上で有用な所見と考えられる。
現在、日本におけるクリプトコックス症症例でも抗GM-CSF抗体が関与しているかどうか、患者血清の収集と測定系の構築を行っている。
以上の所見に併せて151症例の多角的解析を行っており、基礎疾患の有無、症状の進展の状況などを対比しながら研究を進めている。また、これらの症例から培養可能であった菌株について、莢膜形成、メラニン産生、ウレアーゼ産生、37℃での発育能などの病原性を評価しており、患者側のみではなく、病原微生物側からも疾患の進展に関するアプローチを行っている。
以上から、現在の研究の達成度は予定通りにおおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

今後は、日本人のクリプトコックス症患者における抗GM-CSF抗体の有無を測定してその保有率を算出し、他の人種との差があるのかを確認する。
また、GM-CSFのシグナル伝達経路の下流にある転写調節因子とクリプトコックス感染症との関連を検討し、クリプトコックス感染症に対する防御因子を絞り込んでいく。また、GM-CSFにより誘導される免疫反応がクリプトコックス感染症に対してどのように働いているのかを、GM-CSFノックアウトマウスなどを用いて解析する。
さらに、多角的解析を行った臨床症例の症状や検査結果、および検出された菌株の病原性を対比しながら、クリプトコックス症に対する免疫応答を臨床の面からも検討していく。

次年度使用額が生じた理由

本年度は試薬の購入量が少なく、学会発表も次年度に繰り越したため。

次年度使用額の使用計画

翌年度は、試薬の他に実験動物の購入も予定している。また、国際学会での発表も検討している。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Current recommendations and importance of antifungal stewardship for the management of invasive candidiasis.2015

    • 著者名/発表者名
      Taiga Miyazaki, Shigeru Kohno
    • 雑誌名

      Expert Review of Anti-infective Therapy

      巻: 13 ページ: 1171-1183

    • DOI

      10.1586/14787210.2015.1058157.

    • 査読あり
  • [学会発表] 真菌感染症研究の進歩と将来展望2016

    • 著者名/発表者名
      河野 茂
    • 学会等名
      第90回日本感染症学会総会・学術講演会
    • 発表場所
      仙台国際センター(宮城県仙台市)
    • 年月日
      2016-04-15
  • [学会発表] 医真菌学会の将来展望2015

    • 著者名/発表者名
      河野 茂
    • 学会等名
      第59回日本医真菌学会総会・学術集会
    • 発表場所
      ホテルさっぽろ芸文館(北海道札幌市)
    • 年月日
      2015-10-10
  • [学会発表] 日常診療で遭遇する深在性真菌症の診断と治療2015

    • 著者名/発表者名
      河野 茂
    • 学会等名
      第112回日本内科学会講演会
    • 発表場所
      みやこめっせ(京都府京都市)
    • 年月日
      2015-04-12

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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