研究課題/領域番号 |
26461510
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中田 浩智 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (40628492)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | HIV感染 / ケモカイン / CCR5阻害剤 |
研究実績の概要 |
本研究は分子生物学的手法によりHIV侵入過程におけるCCR5、CXCR4の動態の詳細な解明を試み、最終的にはそのデータをコンピュータモデリングに応用し、今後のケモカイン受容体阻害剤の開発につなげることを目的としている。我々が以前同定したHIV-1に対して被感染性を喪失するCCR5変異を含む複数の変異型CCR5発現ベクターを作成し、これをU373-MAGI(UM)細胞にtransfectionし、限界希釈法でクローニングした。野生型CCR5と変異型CCR5の共発現細胞は両方のベクターをUM細胞に同時にtransfectionし、やはり限界希釈法でクローニングし、変異型CCR5混入の割合が異なる20-30個の細胞株を作成した。今年度はさらにこの細胞株を用いて、1)共発現細胞株における野生型・変異型CCR5の発現量の確認、2)細胞表面上のCD4及びCCR5の発現量の算出、3)野生型・変異型CCR5共発現細胞株を用いた感染実験を行った。その結果、野生型・変異型CCR5共発現細胞株では感染成立に十分と考えられる数のCD4、CCR5が細胞表面に発現していても、変異株が10%程度混入すると野生型CCR5のみ発現させた細胞株に比べ被感染性が50%程度まで低下する傾向が認められた。このことはHIV-1の感染成立には被感染性を維持している複数のCCR5が必要である可能性を示唆している。さらにデータを蓄積・解析することで、HIV-1感染の初期ステップの動態の一端を明らかにできると考えられる。また、CCR5のダイナミクスという観点からCCR5阻害剤の作用機序についても新たな知見が得られる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年の目標であった野生型・変異型CCR5ベクターの作成とこれを用いた野生型・変異型CCR5共発現細胞のクローニングのステップはおおむね終了し、一つの変異につき変異型CCR5混入の割合が異なる20-30個の細胞株を樹立し、これまでCCR5の4つの変異について同様の作業を行った。またこれらの細胞のCD4、CCR5の発現量についてはフローサイトメトリーにより、変異CCR5の割合についてはPCR→TAクローニング→シークエンシングにより計算を進めている。上記の過程の進行が順調であり、次年度に予定していた感染実験のステップについても一部実験を進めることができた。また変異型CXCR4発現ベクターの作成も予定通り進んでいるため研究計画は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は感染実験を繰り返し変異CCR5の割合と感染率の影響についてデータを蓄積していく。変異CXCR4ベクターはCD4発現プラスミド+luciferase発現プラスミドをUM細胞にtrasfectionし、作成したCXCR4発現プラスミドとtat発現プラスミドを293T細胞にtransfectionし、fusiono assayを行い、変異導入による被感染性の影響を調べる。その結果に基づき感染成立に重要と考えられる部位を同定していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算額に合わせて無理な物品購入を行うのではなく、次年度分と合わせて実験に使用する物品購入費として有効に利用するため
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次年度使用額の使用計画 |
次年度分と合わせて実験に使用する物品購入に使用する予定
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