ノロウイルス感染症は冬季下痢症原因の第一位となっており、高齢者施設や学校、食堂での集団感染事例も多く、大きな社会被害をもたらすが、現在、有効な抗ウイルス薬やワクチンの開発は研究途上にある。健常人であれは予後は良いものの、ウイルスの感染力は強く、高齢者施設での発生は死亡者を出すこともあり、また、ひとたび院内感染が起きると、免疫抑制状態にある患者に慢性的な症状を引き起こすため、その対策が急がれている。このような状況下、中和活性のある抗ノロウイルス人工抗体を開発することは、ヒト血清につきまとう感染因子混入の危険性や倫理面の問題を回避しつつ受動免疫治療を可能にするため、意義のある研究である。
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