研究実績の概要 |
リケッチア感染症の病態モデルは極めて限定的である。国内で患者が最も多いリケッチア症であるつつが虫病について、血清型により病原性も多様なOrientia tsutsugamushi(Ot)を中心に、in vivoとin vitro感染実験を行い、データの有機的結合、外挿により、リケッチア感染の免疫応答と病態発現機序の解明を目指している。 初年度、2年次とマイコプラズマフリーにした強毒と考えられる標準の3つの型(Karp, Gilliam, Kato)と弱毒と考えられる2つの型(Kawasaki, Kuroki)、抗原性が大きく異なるShimokoshi型、Gilliamの日本型(Japanese Gilliam)を、リケッチアの細胞内殺菌に必要とされるNO産生を欠損するi/e/n NOS KOマウス、感染防御に強く関与するIFNγ KOマウス、それらの野生型のC57BL/6マウスに接種し、強毒株と弱毒株に明らかな臨床的差が認めた。このことから、ex vivoの解析を試みたが十分な初代細胞等を確保できなかったため、すでにin viov感染実験で得たサンプルを用いて、サイトカイン産生の詳細な解析、臓器リケッチア量の差の確認、病理学的な解析を進めた。脾臓の菌量は、同一株感染ではIFNg KO、NOS KO、B6マウスの順に多く、Kawasaki/Kuroki株は他の株よりも少なかった。サイトカインは特にIP-10、IFNg、TNFaが、回復を示したShimokoshiを含め体重変化が認められたマウスにおいて血中濃度が上昇していた。病理学的にはごく一部の細胞に免疫染色によって細胞内の菌の集塊が認められるものの、病理学的な変化は不明瞭な部分が多かった。
|