研究課題
知的障害(intellectual disability; ID)は全人口の1~3%に認め非常に頻度の高い病態の一つであるが、その原因は約半数で不明である。欧米ではID の原因検索としてマイクロアレイ染色体検査、全エクソーム解析を行い成果を上げているが、本邦では体制が整っていない。本研究はIDの遺伝学的解析を体系化し、長野県におけるID 患者の病因および臨床像を明らかにすることを目的としている。平成26年4月に信州大学医学部附属病院遺伝子診療部にID患者専門外来「ID 外来」開設し、当院および信州小児神経診療ネットワークを中心にID患者をリクルートし、週1回外来診療を継続している。平成28年度は新たに27名の研究参加同意が得られ、登録患者は計110名となった。遺伝学的解析結果は以下であった。1)第1次スクリーニング:古典的G分染法と共にマイクロアレイ染色体検査を行い(研究参加前に施行し陰性例含む)新たに4例で陽性、本研究全体で6/110陽性であった。2)第2次スクリーニング:次世代シークエンサーIon PGMを用いてID遺伝子パネル解析を行った。当初解析対象遺伝子は49であったが、平成28年度より80遺伝子に増やした。新たに10例で陽性、解析終了例全体で15/92陽性であった。3)第3次スクリーニング:上記陰性例の一部について、臨床エクソーム解析(TruSightOneシーケンスパネル)または連携研究施設にてトリオ全エクソーム解析を行い、それぞれ4/19、2/11で陽性であった。現時点で研究参加者の遺伝学的検査結果は110名中27名(24.5%)で陽性あった。本研究参加患者の約1/4で原因が判明し、今後の健康管理や次子再発率を含めた遺伝カウンセリングに活かす事が出来た。本邦においてもID患者に対する系統的な遺伝学的検査は有用であることが示唆された。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
J Hum Genet.
巻: 61 ページ: 653-661
10.1038/jhg.2016.27.