研究課題/領域番号 |
26461524
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
藤澤 泰子 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (40402284)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 長鎖脂肪酸 / 乳児栄養 / リポジェニック遺伝子 / PPARγ / 相乗効果 |
研究実績の概要 |
母乳脂質添加による3T3-L1脂肪細胞の網羅的遺伝子発現解析から、母乳脂質のリポジェニック酵素SCD1への抑制効果を見出した。そこで人工乳に比べて母乳に多く含まれる長鎖不飽和脂肪酸(PUFA)として、主要PUFAであるリノール酸(LA)とリノレン酸(ANA)、さらにドコサヘキサエン酸(DHA)と、その重要性が認識され人工乳に添加されるようになったアラキドン酸(AA) を研究の対象とした。これら4種類のPUFA単独効果と、2種類のPUFA(具体的には、LAまたはANAと、DHAまたはAAとの組み合わせ)の複合効果の有無を検討した。 前駆脂肪細胞3T3-L1の分化誘導時(day0)から成熟脂肪細胞段階(Day7)までのPUFA添加によって、SCD1は有意に抑制された。100μM濃度では4種類全てのPUFAが抑制効果を示した。次に2種類のPUFAの複合効果を確認した。成熟脂肪細胞にLA単独(100μM)と LA 90μM+AA 10μMを添加して48時間後のSCD1 などのリポジェニック遺伝子発現を調べた。LA単独処理ではSCD1の遺伝子発現は抑制されなかったが、LA+AA処理で、40%にまで発現抑制が認められた。なお、AA10μM単独処理は、SCD1発現に影響を与えなかった。同様にALA単独処理ではSCD1の遺伝子発現は有意に抑制されなかったが、ALA+AA処理で30%にまで発現が抑制された。DHA低濃度との混合投与では相乗効果は認められなかった。さらにPPARγ siRNAによるノックダウン実験よりLAとALAのSCD1抑制効果はPPARγを介する可能性が考えられた。AAとDHAによるSCD1抑制効果はsiPPARγ処理に影響を受けなかったことから、PUFAsは異なったシグナル伝達経路を介してSCD1を抑制しており、そのため複合添加による相乗効果を発揮する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始時の計画として、母乳を直接添加する実験を計画していたが、母乳サンプル間での差異が大きくデータのばらつきが問題となったため、母乳中の機能性脂質として重要な長鎖不飽和脂肪酸の効果を調べる研究へとギアチェンジをした。そのため、十分な結果をだすまでに1年程度の遅れが生じた。予定では、2年目終了時に論文提出まで終了していることとしていたが、まだ論文の提出にいたっていないため、「やや遅れている」とした。ただ、重要な実験は終了し、結果も論文発表に十分なものとなったため、現在論文準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度であるため、必須事項は論文の提出である。現在準備中であり期間中の論文掲載を目指す。さらに長鎖不飽和脂肪酸と腸管細胞を用いた研究が、準備実験中であるため、さらに実験を行い、論文発表にまでつなげる。 また、これまでの研究において、脂肪細胞における、PUFAによるリポジェニック遺伝子への抑制効果は、おのおの異なるシグナル伝達経路を経由して発揮される可能性が示されたため、さらにPPARsやLXRなどの候補となる核内受容体について調べていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
1平行して行っている、異なる財源による研究のための実験で用いる分子生物学的解析のためのキットや消耗品などの共有が可能であったため、次年度使用額が生じた。 2データ解析と論文準備におもに従事する期間があったため、一時的に実験を中断したため
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次年度使用額の使用計画 |
1論文発表のための実験はほぼ終了したため、実験を再開する。 2シグナル伝達経路の解析のための分子生物学的実験に用いる。
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