研究課題
CRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子治療に向けた基礎的研究として平成27年度は以下の成果を得た。1. 母斑基底細胞癌症候群(Nevoid basal cell carcinoma syndrome)(以下NBCCSと省略)患者由来の繊維芽細胞にセンダイウイルスを用いて4因子(OCT3/4,SOX2,KLF4,c-MYC)を導入することでiPS細胞樹立に成功した。2. 1.で樹立した細胞を用いて未分化マーカー(SSEA-4、TRA1-60、SOX2、NANOG)が発現していること、正常な核型を有していること、免疫不全マウスに移植すると3胚葉成分からなる奇形腫が形成されることが確認された。3. 正常人由来iPS細胞から形成される奇形腫に比べて、骨、軟骨成分が多いことが明らかとなった。更に、奇形種の中にNBCCSで好発する髄芽腫に似た組織系が見つかった。4. iPS細胞でもCRISPR/Cas9システムを用いて遺伝子編集が可能であることが示された。
2: おおむね順調に進展している
母斑基底細胞癌症候群3症例由来のiPS細胞を作製できた点、またiPS細胞に対してCRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子編集が可能であることを示すことができた点から、おおむね順調に推移していると判断した。
1. 母斑基底細胞癌症候群(以下NBCCS)症例由来のiPS細胞に遺伝子編集を施し、残存するPTCH1アレルの破壊を行う。2. 1.の細胞を免疫不全マウスに移植し、腫瘍の発生を解析し、ヘッジホッグシグナル伝達経路の阻害剤が腫瘍の増殖を阻害できるか検討する。3. NBCCS症例由来のiPS細胞に遺伝子編集を施し、変異が生じた側のアレルの修復を試みる。この細胞は将来NBCCSの細胞治療への道を開くものとなる。
iPS細胞の培養には多額の消耗品(培地等)が生じる。次年度は遺伝子改変を行った後、スクリーニングすべき細胞クローンが多数生じると予想され、次年度使用額を捻出する必要があった。
主としてiPS細胞培養のための培地、遺伝子導入のための試薬、培養のための消耗品(培養プレート等)に使用する計画である。また学会発表、論文発表に伴う支出も予定している。
上記URLの研究内容のページにNBCCSにおける遺伝子変異の一覧表を掲載
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http://www.med.kitasato-u.ac.jp/~molgen/