研究課題
ソニックヘッジホッグの抑制性受容体をコードするPTCH1遺伝子の変異で発症する常染色体優性遺伝病である母斑基底細胞癌症候群(NBCCS)の患者3名の線維芽細胞からiPS細胞を樹立した。樹立したiPS細胞は一部(後述)を除いて血液と同一の胚細胞変異をもっていた。また健常人由来iPSと同様の未分化性を示し、PTCH1の変異をもつにもかかわらず、増殖能に差がみられなかった。免疫不全マウスにこのiPS細胞を移植したところ、発生した全ての奇形腫に、NBCCSで好発する髄芽腫様組織が認められた。このような組織は健常人由来iPS細胞の移植では全く発生しなかった。この組織ではTuj-1、Synaptophysin、Nestinなどの髄芽腫のマーカーが陽性であった。更に、レーザーマイクロダイセクション法で奇形腫1例から上記組織部分を採取し遺伝子解析を行なったところ、胚細胞変異に加えて、PTCH1の正常アレルの消失(LOH)が認められたことから、NBCCSで発症する腫瘍と同様の機序で髄芽腫が発症していることが明らかとなった。以上より、本研究でヒト髄芽腫モデルが確立できたと考えられ、今後髄芽腫に対するプレシジョン・メディシンへの応用が期待される。またCRISPR/Cas9システムを用いて、残る正常アレルにも変異を導入したiPS細胞を作製することで、さらに効率よく髄芽腫を発生させられる可能性がある。また皮膚の基底細胞に分化させる方法を確立できれば、NBCCSで好発する基底細胞癌の疾患モデルの確立も期待される。一方、樹立したiPS細胞株の一部に胚細胞変異と異なる変異が検出されたため、その株が由来する症例の線維芽細胞と末梢血のゲノムDNAを次世代シーケンサーで解析したところ、この症例は、本疾患では未報告のモザイク症例であることが証明でき、その発症機序として、極めてまれな復帰エラーが推測された。
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