研究課題/領域番号 |
26461536
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研究機関 | 一般財団法人脳神経疾患研究所 |
研究代表者 |
衞藤 義勝 一般財団法人脳神経疾患研究所, 先端医療研究センター, センター長 (50056909)
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研究分担者 |
藤崎 美和 一般財団法人脳神経疾患研究所, その他部局等, その他 (50642641) [辞退]
辻 嘉代子 一般財団法人脳神経疾患研究所, その他部局等, 研究員 (60584232) [辞退]
柳澤 比呂子 一般財団法人脳神経疾患研究所, その他部局等, 研究員 (60416659)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Tay-Sacks病 / ポンぺ病 / iPS細胞 / 神経細胞 / Miglustat / 細胞治療 |
研究実績の概要 |
ライソゾーム病、ライソゾーム内加水分解酵素あるいはライソゾーム膜タンパク質の先天的異常により、基質がライソゾーム内に蓄積する事で発症する遺伝病で、病態解明および治療法開発のため、iPS細胞を神経細胞等に分化誘導させ、ライソゾーム病の病態解析を行うことは、低侵襲性の疾患モデルとして有用である。テイ−サックス病およびポンペ病患者から樹立されたiPS細胞を神経細胞へ分化誘導した。得られた細胞は、神経細胞のマーカーであるTubulin βIII陽性であった。この細胞にテイ−サックス病の基質合成抑制薬であるN-Butyldeoxynojirimycin (NB-DNJ, Miglustat)を添加し、TFEB、ST3GAL5、B3GALT4は、を添加する事で正常コントロールの発現量に近い値を示す事を認めた。ライソゾーム転写因子であるTFEBとGM2シンターゼであるB4GALNT1で、テイ−サックス病iPS細胞から分化誘導した神経細胞は、正常コントロールのものより高い値を示した。B4GALNT1はGM2シンターゼであり、ライソゾーム中にGM2ガングリオシドが蓄積する事で、細胞膜および細胞質内のGM2ガングリオシドが低下するのを補うために発現量が高くなっている可能性が考えられた。一方、ポンペ病に関して、LC3, ATG5の発現量に差は見られず、ポンペ病のケミカルシャペロンである、1-Deoxynojirimycin, Hydrochloride (AT2220)を添加しても差は見られなかった。AT2220は本研究で用いた変異には有効ではないと思われる。本研究方法を用いて、ライソゾーム病iPS細胞から分化誘導した神経細胞を解析する事で、病態メカニズムの解明や、治療法開発に有用である事が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りTay-Sacks病並びにポンぺ病 iPS細胞から神経細胞に分化することに成功し、電子顕微鏡でも各々神経細胞に蓄積物質が認められた。更にTay-Sacks病では蓄積している基質をMiglustatによる基質合成抑制剤投与で蓄積しているガングリオシドの蓄積低下に伴い、ガングリオシド合成系酵素の促進がみとめられた。 又ポンぺ病神経細胞ではAT2220添加で変化ないことからこのシャペロンは治療効果に有効でないことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究はTay Sacks病のiPS細胞から神経細胞に分化誘導に成功した。この患者からの神経細胞をMiglustatの基質合成抑制療法により治療を試み、蓄積物質の低下また同時にガングリオシド系の合成酵素の低下を見出した。Miglustatの新しい機序を提案した。今後更に別のガングリオシド合成系の基質合成抑制薬(GSZ/SAR402671)を使用して、Tay-Sacks病患者の治療効果を検討する。新しい基質合成抑制治療薬の神経細胞の細胞内代謝、特にオートファジーの分子マーカーの変化も同時に検討予定。 ポンぺ病神経細胞での障害は従来余り注目されていなかったが、本研究でポンぺ病神経細胞も障害していることから新たなシャペロン治療を検討予定である。ファブリ病並びに異染性脳白質ジストロフィー症(MLD)の運動ニューロンの研究も同時に進め脱髄のメカニズムなど検討予定である。
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