研究課題/領域番号 |
26461537
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
佐野 伸一朗 浜松医科大学, 医学部, 協定訪問共同研究員 (60535574)
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研究分担者 |
鏡 雅代 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 分子内分泌研究部, 室長 (70399484)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | GNAS遺伝子 / GNASメチル化異常 / GNAS構造異常 |
研究実績の概要 |
H28年度末までに集積した偽性副甲状腺機能低下症患者サンプルと臨床情報は78症例に至った。このうち70症例については既に分子遺伝学的解析を終えることができた。目標症例数の50症例を大きく上回る症例数となった。この70症例の中には、8例の先天性甲状腺機能低下症としてフォローされていた症例が含まれていた。この先天性甲状腺機能低下症として治療されていた症例の臨床像を詳細に検討すると、生後速やかに甲状腺補充療法が開始されているにもかかわらず、乳児期に発達遅延や著しい肥満が認められていた。 分子遺伝学的解析が終了した70症例の内訳は、GNAS変異28例、GNASメチル化異常症例41例(Sporadic type :21例、Autosomal dominant type: 20例) , GNAS領域の遺伝子構造異常に伴うメチル化異常を呈する症例1例であった。このGNAS遺伝子構造異常にともなうメチル化異常を呈する症例は、AHOを伴わないため臨床的にはPHP-Ibと診断されていた。われわれの構築したPHPの分子遺伝学的解析アルゴリズムにより、GNAS領域の複雑なコピー数異常と非典型的メチル化異常パターンを同定した。本例の構造異常とメチル化パターンは既報にないものであった。本例に対し次世代シークエンサーを用いることにより、世界で初めて複雑な遺伝子構造異常に起因するGNASメチル化異常を呈する症例を同定することができた。上記の結果を報告した (Nakamura A, et al. J Clin Endocrinol Metab, 2016;101(7):2623-7) また我々は原因不明のGNASメチル化異常を呈する家族例を同定しており、この症例の解析に着手したところである。この症例の解析は、おそらく新たなPHP発症機序を示すことができると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の達成度は順調であると考える。理由は以下に述べる。 1)症例集積は順調で目標症例数50を上回る70症例のPHPの分子遺伝学的解析が終了している。 2)この症例数(70例)は本邦のみならずアジア諸国では最大数の集積であろうと考えている。 この70症例を用いた偽性副甲状腺機能低下症のepigenotype-phenotype correlationsについては、現在論文執筆中であり、H29年度中の発表を目指している。 3)世界で初めてのGNAS遺伝子構造異常に起因するGNASメチル化異常を呈する症例を同定し論文発表した。
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今後の研究の推進方策 |
PPHP/POHの症例集積はPPHP3例にとどまり、臨床情報も十分入手できていない。POHにいたっては、症例が集積できていない点は今後の課題である。POHは非常に稀な疾患であるため症例の集積は困難であることが予想されたが、これについては学会等で積極的に研究成果発表を行い、我々の研究の周知に努め臨床医からの症例紹介つながる努力を継続していく。 分子遺伝学的解析を終えたPHP 70症例中、multilocus imprinting disturbances(MLID) が同定できた症例は1例である。このMLID一例はPHPに加えてBechwith-Wiedemann syndromeの臨床像を有していた。このような症例の更なる集積を図りたいと考えている。現在MLIDの同定はパイロシークエンスを用いてGNAS領域以外の8か所のDMRをスクリーニングしているが、パイロシークエンスでは同定されないMLID症例が存在することが予想される。従って、今後は、PHPとしては説明が困難な特異な臨床像を持つ症例を優先的にgenome-wideなメチル化解析を行うことによりMLIDを同定していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
PPHP/POHの症例集積が3例位にとどまり十分な解析可能な症例数に至っていないため次年度も症例の集積に努める。 MLIDを呈したPHP症例はまだ1例しか同定されていないため、更にサンプルの集積と解析が必要となったため。 現在、『偽性副甲状腺機能低下症のepigenotype-phenotype correlations』について、現在論文執筆中であり、H29年度中の発表を目指している。
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次年度使用額の使用計画 |
1)分子遺伝学的解析に必要な試薬、キットの購入、2)論文発表のための校正、印刷代 3)研究発表のための学会参加費用に使用する計画である。
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