研究実績の概要 |
研究期間を通じ集積した偽性副甲状腺機能低下症患者サンプルと臨床情報は80例に至った。現在も症例数は増加傾向である。このうち70症例については既に分子遺伝学的解析を終えることができた。目標症例数の50症例を大きく上回る症例数となった。 分子遺伝学的解析が終了した70症例の内訳は、GNAS変異28例、GNASメチル化異常症例41例(Sporadic type :21例、Autosomal dominant type: 20例) , GNAS領域の遺伝子構造異常に伴うメチル化異常を呈する症例1例であった。そこで我々は本例の構造異常を、次世代シークエンサーを用いて明らかにし既報にない複雑な遺伝子構造異常に起因するGNASメチル化異常を呈する症例を同定することができた(Nakamura A, et al. J Clin Endocrinol Metab, 2016;101(7):2623-7)。 また詳細な臨床情報を入手宇可能であった69症例に関しepigenotype-phenotype correlationの検討を行い、本邦における最大の症例数を用いた解析として発表した (Sano S, et al, J Endocr Sco, 2017;2(1):9-23)。GNAS変異を有する症例は、GNASメチル化異常を有する症例よりも診断年齢が有意に若く、その理由として前者では皮化骨腫、低身長、肥満などの臨床像が乳幼児期に顕性化する一方、後者では思春期以降に低カルシウム血症によるテタニーが出現するためということが判明した。また皮化骨腫は、GNAS変異患者の中でも無機能型変異(nonsense mutation, frameshift mutation, deletion)を有する患者有意に出現する臨床像であった。先天性甲状腺機能低下症として治療されていたPHP8症例の臨床像を検討すると、生後速やかに甲状腺補充療法が開始されているにもかかわらず、乳児期に発達遅延や著しい肥満が認められていた。
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