研究課題/領域番号 |
26461538
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所) |
研究代表者 |
黒澤 健司 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), その他部局等, その他 (20277031)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マイクロアレイ / 多発奇形 / 精神遅滞 / エクソーム / 次世代シーケンサー / copy number variant / ゲノム支援 |
研究実績の概要 |
多発奇形・精神遅滞をヒトにおける発生異常ととらえ、その病因を明らかにすることを目的に、Exome解析による網羅的な遺伝子・ゲノム異常スクリーニングを計画した。対象としては、現在までにマイクロアレイCGHを終え、臨床的に既知疾患を否定した症例を選択した。文部科学省科学研究費新学術領域研究(研究領域提案型)『生命科学系3分野支援活動』の「ゲノム科学の総合的推進に向けた大規模ゲノム情報生産・高度情報解析支援」(ゲノム支援)のサポートを得ることが可能となったために、症例によっては既知メンデル遺伝病(4813遺伝子)パネルスクリーニングを経て、さらに全エクソーム解析へ進むことが可能となった。平成26年度に当初の計画を遥かに上回る40例に対してマイクロアレイCGHスクリーニング後メンデル遺伝病4813遺伝子スクリーニングを行うことができ、8例で疾患特異的変異を検出することができた。変異を検出できなかった例あるいは明らかに全エクソーム解析が適応となる症例に対しては、上述のゲノム支援研究のサポートを得て、30例が現在解析中である。8例中3例は責任遺伝子のCNV(copy number variant)を原因としていることが明らかとなり、多発奇形・精神遅滞の発症メカニズムとして、ゲノム再構成の評価は不可欠であり、当研究グループが採用しているZスコアによる次世代シーケンスデータのread depthのCNV変換が極めて有用であることを証明することができた。また、当研究グループが考案したオリジナルのデータ解析システムが有効に機能することも確認できた。既知遺伝子スクリーニングで判明した症例については既に報告準準備を進めており、ゲノム支援の解析サポートを受けた症例については、解析データを受け取り次第当研究グループでのデータ解析システムで解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画段階では初年度で同胞発生例では5家系において病因変異を明らかにすることを予定としていたが、明らかにできたのは2家系で、かついずれの家系も同胞間で責任変異が共有されていないことが判明した(CASK遺伝子変異、Xq21.3微細欠失)。しかし、孤発例全体としては約20%で病因を明らかにすることができたので、達成度は必ずしも低くはないと考えられる。特に、現在まで原因不明でありながら明らかにすることができた20%の症例の殆どは過去のデータベースに記録がない新規の変異であった。また、既知メンデル遺伝病4813遺伝子スクリーニングから、さらに3次スクリーニングとしての全エクソーム解析に30家系を進めることができたことは当初の計画(5家系程度)を遥かに超えた達成度と考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、解析適応症例の集積と段階的な遺伝子変異スクリーニングを進める。解析適応症例は、研究初年度と同様にマイクロアレイCGHでスクリーニングを経た症例を中心として臨床的に既知症候群を否定した症例が中心となる。既知メンデル遺伝病4813遺伝子スクリーニングも同様に2次スクリーニングとして進める。この時点で、20%の疾患特異的変異を明らかにすることは前年度で確認できたことから、既知遺伝子の変異でも新規変異の場合には臨床像の多様性を証明する例として極めて重要である。合わせて明らかにしてゆく予定である。ゲノム支援からの初年度30例の全エクソーム解析データは、当研究グループでのパイプラインにより解析予定であり、CNV変換も試みる予定である。新規疾患特異的遺伝子を同定した場合には、同様症例の検索として、スクリーニング体制をさらに進める予定である。
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