研究課題/領域番号 |
26461540
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
白石 秀明 北海道大学, 大学病院, 助教 (80374411)
|
研究分担者 |
竹内 文也 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (30281835)
柳生 一自 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (90597791)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 言語発達 / 脳磁図 / 事象関連脱同期 / 小児 |
研究実績の概要 |
言語遅滞児に対し、言語機能発達段階を脳磁図によって検討し定量化・比較を行う為に、5名の患児に対して、複数回の検討を行なった。北海道大学病院に設置されている、306ch脳磁計を用いて、独自に開発した文字情報混合装置を用いて、患児の好む任意のDVD画像に文字情報を組み込み、これを約10分間の時間を単位として約40分間視聴することによって、文字刺激を行った。刺激情報は、遠距離焦点の強化プロジェクターを用いて眼前に置いたスクリーンに直接投影し、この画像を患児に見せた。 言語刺激に対する、事象関連脱同期反応を検討した。事象関連脱同期反応とは、本来人間が持つ固有の基礎律動の中に、刺激により生じた、基礎律動波と異なる周波数の律動波が生じることにより、固有の基礎律動が減弱し、混沌性が増す状態を示す。 独自に開発した、Matlab toolを用いた、解析ソフトウエアを用いて、任意の時間範囲、周波数、脳の部位における、事象関連脱同期反応を、図示した。この検討の上で、ヒトの基本的な基礎活動である、10Hz帯域の基礎活動(α律動)周辺の5~15Hzの基礎活動に特に注目した。 今年度の検討では、急性脳症後に言語を獲得しつつある患児、Angelman症候群で発語はないものの、言語理解が進んでいる兄弟例、先天性筋症で発語はないものの言語理解が予想される患児、片側巨脳症で半球離断を行なった患児において、事象関連脱同期の出現と、その部位の変化を検討した。上記5例の内、片側巨脳症患児では、離断脳において、てんかん性突発波の出現が多く、刺激に対する誘発反応が得られなかった。その他4例における6ヶ月間隔の縦断的検討では、10Hz帯域における有意な事象関連脱同期は両側半球に見出された。 脳血流検査を用いた先行研究において、3歳までは右半球優位の言語機能を持つとの報告があるが、本研究では、その前に両側性の活動が存在しているのではないか、との仮説を持つに至った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進捗により、言語発達過程において言語優位半球が決定される前に、両側大脳半球が連関して活動し、両側性の活動を示す可能性がある事を、世界で初めて示した。 本研究の成果を、第44回日本臨床神経生理学会にて発表した。 また、独自に開発した刺激装置、刺激ソフト、解析ソフトは安定して稼働しており、運用に関しても、簡便で検査技師での施行可能であった。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度より、本研究に専属で従事する博士研究員を雇用し、研究対象症例を増やし、また、検査回数を増加させることを企画している。新規に、中枢神経に中途障害を負った患児において、随時検討を行なっていく予定である。 また、健康保険収載されている臨床検査法として脳磁図検査は通常行なわれているが、術前検査として、言語機能解析を追加する事により、言語機能障害児と、健常児との比較を行なう予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に博士研究員を雇用するために、使用を留保したため。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に博士研究員を雇用する。
|